「中学生が3行まとめを再現できるか」— 優しさの品質基準を作る(連載⑮)

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「中学生が3行まとめを再現できるか」— 優しさの品質基準を作る(連載⑮)

「中学生が3行まとめを再現できるか」— 優しさの品質基準を作る(連載⑮)

連載第15回です。前回は複数のAIに辛口レビューをさせる話でした。今回はそのレビューで実際に使った評価軸のうち、「わかりやすさ」をどうやって感覚ではなく検査できる基準に落とし込んだかをまとめます。


「優しい」は測れないと改稿できない

原稿を書き終えたとき、自分では「初心者にもわかりやすく書けた」つもりでした。ただ、この感覚には根拠がありません。著者本人は内容をすでに理解しているため、多少説明を飛ばしていても「わかった気」で読めてしまいます。読者は初見でその文章に向き合うので、著者の主観的な手応えはあてになりませんでした。

改稿の指示をAIに出す際にも、「もっとわかりやすくして」だけでは具体的な修正が返ってきません。何を満たせば合格なのかを数値・行為として定義しない限り、改稿は堂々巡りになるというのが実感でした。そこで「わかりやすさ」を検査可能な基準に分解する作業を行いました。


品質基準4項目の設計

最終的に、次の4項目を「わかりやすさ」の検査基準として設定しました。

基準 内容 検査方法
3行まとめ再現テスト 章末の「3行まとめ」だけを読んで、その章で言いたいことが再現できるか 3行だけを別出しして読み直す
図なし3ページ禁止 見開き換算で3ページ以上、図・表・コラムのいずれもない状態を作らない 章ごとに図表の間隔をチェック
比喩1つ以上/章 各章に、専門的な概念を日常語に置き換える比喩を最低1つ入れる 比喩カタログと照合
専門用語の初出処理 専門用語が章内で初めて登場する箇所には、必ず1文以内の言い換えを添える 初出語を洗い出して確認

いずれも「はい/いいえ」で判定できる形にしたのがポイントです。「わかりやすいと思う」ではなく「3行まとめだけで趣旨が伝わるか」という具体的な検査行為に置き換えることで、AIにもレビューを依頼しやすくなりました。


各章に適用した結果 — 引っかかった章と直し方

4項目を全章に機械的に適用したところ、いくつかの章で基準を満たさない箇所が見つかりました。

  • 3行まとめ再現テストで落ちた章:3行まとめが結論の言い換えに留まり、根拠部分が抜け落ちていた章がありました。まとめの3行のうち1行を「なぜそうなるか」の要約に差し替えることで解消しました。
  • 図なし3ページで落ちた章:数式の導出過程を文章だけで説明していた箇所があり、途中に簡易な概念図を1枚追加しました。
  • 比喩0件だった章:制度・手続き寄りの章(パラメータ更新の仕組みなど)は比喩を入れにくく、当初は0件でした。「パラメータファイルは地図の着せ替え表」のような比喩を後から追加しています。

いずれも「基準に照らして機械的に見つかる」という点が有効で、感覚的な読み直しでは気づきにくい抜け漏れを拾えました。


novice向け改稿での追加基準 — 比喩とふりがな言い換え

想定読者のうち、測量業界の実務者だけでなく「地図が好きな一般読者」も含めていたため、上記4項目に加えて次の基準も設けました。

  • 初出の専門用語には、可能な限りふりがなではなく言い換えを添える(「楕円体高(GNSSが直接測る高さ)」のような形)
  • 数式は1章につき1本までに制限し、数式の前後には必ず日本語の説明文を置く
  • 章の型を「扉→本文→コラム→3行まとめ→アプリで確かめる」の順に統一する

これらは既存の文体ルール(執筆の文体ルールを先に決めた回で扱った内容)と重なる部分もありますが、今回の4項目はあくまで完成原稿を検査する側の基準として独立させています。書く前のルールと、書いた後の検査基準を分けたことで、両方の抜け漏れを別々にチェックできるようになりました。


ブログにも使える汎用チェックリスト化

この4項目は、Kindle本の原稿に限らずブログ記事にも応用できると感じています。実際、この連載記事自体も「3行まとめ」「比喩」「専門用語の言い換え」を意識して書いており、技術ブログの品質チェックリストとしてそのまま流用できる汎用性があります。

  • 章末(記事末)の「まとめ」だけで趣旨が伝わるか
  • 図・表・具体例なしの説明が長く続いていないか
  • 専門用語が説明なしで初出していないか
  • 抽象的な概念を1つでも身近な言葉に置き換えられているか

書籍執筆のために作った基準が、結果的に日々のブログ執筆にも還元される形になりました。


まとめ

  • 「わかりやすさ」を感覚ではなく、3行まとめ再現テスト・図なし3ページ禁止・比喩1つ以上/章・専門用語の初出処理という4つの検査可能な基準に分解した。
  • 全章に機械的に適用することで、感覚的な読み直しでは気づきにくい抜け漏れ(根拠の欠落・図の不足・比喩の偏り)を発見できた。
  • 一般読者も想定読者に含めていたため、ふりがなではなく言い換えを添えるなど、novice向けの追加基準も設けた。
  • この4項目はKindle本に限らず、ブログ記事の品質チェックリストとしてもそのまま応用できる。

次回は、原稿中の数値をすべて裏取りした話を書く予定です。

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開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


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