『日本の測地系がわかる本(実装編)』刊行 — 座標変換エンジンを自作して国土地理院と1mmで一致させる

シリーズ第1巻『日本の測地系がわかる本』は、「地図の座標はなぜズレるのか」を数式なしの物語で描いた概念書でした。その続編にあたる第2巻『日本の測地系がわかる本(実装編)』では、いよいよ 概念を動くコードに落とします。日本の座標変換エンジンをゼロから設計し、国土地理院の公式ツールと ミリ単位で突き合わせる までを、一本の線でつなぐ技術書です。
この記事では、本書に何が書いてあるかをサマリーとしてご紹介します。
なぜ「実装編」が要るのか
日本の座標変換は、世界標準ライブラリ(PROJ)だけでは埋めきれない部分を持っています。旧測地系からの引越し(TKY2JGD)、地震のたびに面で貼り直す補正(PatchJGD)、毎年・隔月で更新される時間依存の補正(セミダイナミック補正・定常時地殻変動補正)——これらは、汎用ツールでは「黙って近似」されたり「黙って無視」されたりします(本書の第2章で正面から扱う落とし穴です)。
本書は、これらを読み解き、動くエンジンとして実装し、公式ツールと照合するまでを扱います。GeoConverterPro / GeoPrism の共通エンジン GeoCoreJP の設計思想を、公開仕様どおりの Python で書き起こしながら解説します。
何が書いてあるか — 全10章
- 第1章 楕円体の幾何:長半径・扁平率・二つの曲率半径・子午線弧長、そしてガウス・クリューゲル投影(平面直角19系)。解析式で閉じる世界。
- 第2章 変換モデルの地図:7パラメータ変換とグリッド補正の役割分担。PROJ がグリッドを持たないと何が起きるか も正面から。
- 第3章 グリッド補正の実装:全国を格子に切り、4隅からバイリニア補間する「面で補正する」骨格。TKY2JGD から定常時地殻変動補正まで、すべて同じ形。
- 第4章 逆変換の反復:閉じた逆式を持たないグリッド補正を「順変換の反復」で解く。往復誤差ゼロに至る設計思想 と、国土地理院の非反復 XYZ⇔BLH 新算式との比較。
- 第5章 高さの変換:標高 = 楕円体高 − ジオイド高(H = h − N)。データ欠損の扱いまで。
- 第6章 複数地震の逐次適用:発生順に重ねる非可換な合成、2段構造、複合補正 まで(対応地震パラメータの背景)。
- 第7章 境界と品質開示:4隅が揃わない境界で「連続性を担保する」割り切りと、品質指標 CCQ(座標変換クオリティー) の設計。
- 第8章 1mmの検証:73点のテストポイント設計 と、国土地理院5ツールとのミリ単位照合 の読み方。
- 第9章 パラメータDBの構築:.par ファイルから SQLite への変換パイプライン。
- 第10章 ヒートマップ:補正量を全国で可視化して「効き方」を目で確かめる。
巻末には 付録A〜E(DBフォーマット、定数表、言語非依存の擬似コード、PROJ との関係、参考文献・一次情報リンク集)を収録しています。
動かせる Python 教材つき
各章末に「Pythonで動かして確かめる」節を収録しました。GeoCoreJP(商用エンジン)のソースは載せませんが、機能を公開仕様どおりの Python で書き起こし、手元で同じ結果を再現できます。
- 標準の Python 3 で動作(numpy 不要、標準ライブラリのみ)
- グリッド系は「誇張した架空のテストデータ」を内蔵し、補間・反復・検証の効きが数字で見える
- 配布コードは GitHub で公開:
github.com/amru195704/amru195704のgeodetic-book-py/
補間、固定点反復、逐次適用、検証——読むだけでなく、手を動かして追体験できます。
こんな方のための本です
- GIS・測量システムの開発者:業務で座標変換の実装・検証の責任を負う方
- 外部ライブラリの妥当性を判断する立場の技術担当の方
- PROJ など既存ライブラリの「中身」を理解したい個人開発者・学生
- ある程度 Python が読める方
第1巻との関係
第1巻『日本の測地系がわかる本』は「なぜ座標がズレるのか」を数式なしで描いた概念書、本書はその続編=数式と実装編です。各章末の「第1巻の対応章」で相互参照しているので、概念に立ち返りながら実装を追えます。
AIの辛口レビューで鍛えた
本書は、執筆と並行して複数のAI評価者による辛口レビューを反復して受け、指摘を一つずつ潰しながら仕上げました。最終評価では、独立した2つのレビューがそろって「出版レベル/校了」と判定しています。主な講評は次のとおりです。
- 「導入文・理解のゴール・3行まとめの三点セットが完璧に機能している」
- 「グリッド補正やPROJフォールバックの図が秀逸」「靴と靴下(複合補正の順序)の図も効いている」
- 「商用エンジンのソースを載せず、公開仕様どおりのPythonで書き起こす構成は、商用エンジンを持つ著者として最適解」
指摘には、リストの欠陥(データ欠損時のクラッシュ)を突く技術的なものもあり、コードと本文の両方を直して照合し直しました。レビューを受けて反復した過程そのものは、別記事「Kindle技術書『実装編』制作記」で紹介しています。当初は酷い言われ様でしたが最終評価で合格をもらえたのでAIさんを信じて販売します。
発売情報

- 形式:固定レイアウト(数式画像・コード整形のため)。約94ページ、図版多数
- 価格(予定):お披露目 ¥980 → 定価 ¥1,650。Kindle Unlimited 対応
- Amazon Kindle にて 近日発売予定 です(国土地理院の使用承認待ち)
※本書の数値・制度は2026年の執筆時点のものです。実務では最新の国土地理院公表値をご確認ください。
開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。
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