
CCQ(座標変換クオリティー)とは
以前の記事「GeoConverterPro の座標変換を国土地理院の公式ツールで全数検証する」では、GCVP の変換が国土地理院(GSI)の公式ツールと おおむね1mm未満 で一致することを示しました。
ただし、これには 前提 があります。補正に使う「4隅」のデータがすべてそろっている地点 では GSI とほぼ完全に一致しますが、4隅のうち一部しかデータが無い地点(海沿い・離島・補正範囲のふち) では、GCVP の結果は GSI と 一致しない場合があります。
この「4隅がどれだけそろっていたか」を変換ごとに見える化する指標が CCQ(座標変換クオリティー / Coordinate Conversion Quality) です。本記事では、CCQ の考え方と、座標変換詳細の見方を解説します。
1. なぜ4隅なのか — 双線形補間のしくみ
測地系の補正(TKY2JGD・PatchJGD・セミダイナミック補正など)は、日本全国を約1km四方の メッシュ に区切り、各メッシュの 格子点(ノード) に補正量を持たせています。
任意の地点の補正量は、その地点を囲む 4つの格子点(左下・右下・左上・右上=「4隅」) の値から 双線形補間 して求めます。つまり1点の変換には、原則として 4隅すべての補正データ が必要です。
| 国土地理院(公式) | GeoCore(GCVP/GPRMの変換エンジン) |
|---|---|
| 4隅すべてに補正値がある場合のみ補正する | 4隅のうち 1隅でもあれば 補正する(欠けた隅は 変異量0 として補間) |
GeoCore は「1隅でもあれば計算する」設計です。これは 意図的な方針 で、理由は 連続性 にあります。もし4隅がそろわない地点で補正を打ち切ると、補正範囲の境界で座標が急に飛ぶ(非連続になる)ため、ポリラインやポリゴンを扱う CAD などのデータ変換で図形が破綻します。そこで GeoCore は欠けた隅を 0 とみなして補間を続け、境界をまたいでも座標を連続させます。
その代わり、4隅がそろわない地点の値は欠損隅を0で埋めた近似であり、4隅必須の GSI 公式ツールとは ずれます(GSI 側はそもそも「エリア外」で値が出ません)。これは「誤り」ではなく 設計方針の違い ですが、利用者には「ここは GSI と挙動が分かれる」ことを必ず知らせる必要があります。それを担うのが CCQ です。
2. CCQ の定義
CCQ は、ある座標変換で使われた4隅のうち、実際に変異量を持っていた隅の充足度 を分数 分子/分母 で表します。
- 分母 … 4隅補正1ステップにつき +4
- 分子 … そのステップの4隅のうち、変異量が0以外だった隅の数(0〜4)
- 複数回・複数段の補正は、分子・分母をそれぞれ 合算 します。
読み方
- 分子=分母 → 全ステップで4隅がそろっている=正常。
CCQ 4/4 - 分子<分母 → 欠けた隅を0埋めしたステップを含む=注意。先頭に⚠️が付き
⚠️ CCQ 3/4 - 4隅が全く無い/全隅0 → 「補正なし」。分母に加算しません(
CCQ -/-)。
例)3地点をまとめて変換し、各地点が4隅補正1ステップを持つ場合、分母は 3×4=12。3地点の有効隅が 4+3+2 隅なら ⚠️ CCQ 9/12。
3. 検証の考え方 — 「1〜3隅しかない地点」を狙って探す
CCQ の効果を確かめるには、わざと 4隅がそろわない地点 を変換し、GSI の PatchJGD と突き合わせます。テスト座標は次の方針で選びました。
- 各地震の最大変位点の近く を第一候補とする(補正量が大きいほど、4隅欠けの影響=ずれが大きく出る)。
- その近傍で、補正データの 被覆境界(4隅のうち1〜3隅しかないメッシュ) に当たる地点を、補正DBから直接抽出する。
- 地点はメッシュセル中心の緯度経度(度)。各地震パラメータの実データから算出した 予測隅数 を付す。
補足:能登半島地震2007・中越沖地震2007・岩手宮城内陸地震2008 の震源近傍は、東北地方太平洋沖地震2011 など他補正の被覆内 にあり4隅がそろうため、「1〜3隅」の地点が作れませんでした。これらは逆に「最大変位点近傍でもGSIと一致する(4/4)」側の例になります。
テスト座標(追加分)
入力は 東京測地系(前回の全数検証と同じ入力ファイルを使用)。変換経路は 東京測地系→JGD2000→JGD2011(=JGD2024基準)→jgd2024b/c/d で、地震時の4隅補正は 2003〜2011年の地震が JGD2000⇔JGD2011 ステップ、2016・2024年の地震が JGD2011⇔jgd2024b ステップで効きます。
各地点は、補正DB(jgdMerge2011 / jgdMerge2024)の格子点の有無から、各地震の最大変位点近傍で補正データの被覆境界(4隅の一部しか格子点が無いメッシュ) に当たるよう選びました。
| no | 地点(震源) | 緯度 | 経度 | 近傍の補正量 |
|---|---|---|---|---|
| 65 | 牡鹿半島東方沖A(東北沖2011) | 38.370830 | 141.631250 | 約5.84m(全国最大級) |
| 66 | 牡鹿半島沖B(東北沖2011) | 38.329170 | 141.606250 | 約5.81m |
| 67 | 宮古島東岸(宮古島近海2008) | 24.745830 | 125.456250 | 約1.20m |
| 68 | 宮古島東端沖(宮古島近海2008) | 24.745830 | 125.468750 | 約1.18m |
| 69 | 十勝海岸沖(十勝沖2003) | 42.262500 | 143.331250 | 約0.78m |
| 70 | 玄界灘(福岡西方沖2005) | 33.662500 | 130.181250 | 約0.12m |
| 71 | 益城東方(熊本2016) | 32.795830 | 130.956250 | 約1.04m |
| 72 | 富山湾沖(能登半島2024) | 36.962500 | 137.481250 | 約0.12m |
| 73 | 日向灘沿岸(日向灘2024) | 31.795830 | 131.493750 | 約0.13m |
比較用に、既存のテスト座標(県庁所在地や各市街地点)は4隅がそろう CCQ 4/4 の地点として機能します。
ダウンロード(前回の全数検証と同じファイルに、上記の境界点 no.65〜73 を追加したものです):
4. 検証結果(GCVP × 国土地理院 PatchJGD)
各地点を国土地理院 PatchJGD(該当する地震の補正パラメータを選択)に1点ずつ入力して照合しました。9点すべてが PatchJGD で「入力値は対象地域でないため補正しません」=対象地域外でした。各点の評価セルは(DBで確認すると)1〜3隅にデータがある境界セルです。
| no | 地点(震源) | 評価セルの隅数 | GCVP の CCQ | GCVPの地震補正量 | PatchJGD 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 65 | 牡鹿半島東方沖A(東北沖2011) | 2/4 | ⚠️ 16/32 | 約292 cm | 対象地域外 |
| 66 | 牡鹿半島沖B(東北沖2011) | 1/4 | ⚠️ 14/32 | 約145 cm | 対象地域外 |
| 67 | 宮古島東岸(宮古島近海2008) | 3/4 | ⚠️ 41/52 | 約75 cm | 対象地域外 |
| 68 | 宮古島東端沖(宮古島近海2008) | 1/4 | ⚠️ 19/52 | 約24 cm | 対象地域外 |
| 69 | 十勝海岸沖(十勝沖2003) | 3/4 | ⚠️ 36/52 | 約69 cm | 対象地域外 |
| 70 | 玄界灘(福岡西方沖2005) | 3/4 | ⚠️ 26/32 | 約9 cm | 対象地域外 |
| 71 | 益城東方(熊本2016) | 3/4 | ⚠️ 31/32 | 約38 cm | 対象地域外 |
| 72 | 富山湾沖(能登半島2024) | 2/4 | ⚠️ 39/56 | 約5 cm | 対象地域外 |
| 73 | 日向灘沿岸(日向灘2024) | 3/4 | ⚠️ 21/32 | 約9 cm | 対象地域外 |
補正量は隅数が多いほど(局所の最大変位に近いほど)大きく、0埋め補間が連続的に効いていることが分かります。実際、東北沖の被覆境界を横切る測線(90m刻み)で補正量を追うと、内部の完全補正(約584cm)→境界セルで滑らかに減衰→外側で0 へと、セル境界でも跳ぶことなく連続して接続します。これが、補正範囲のふちで座標を非連続にしない(CAD等で図形を破綻させない)GeoCore の狙いです。
ここが CCQ の核心です。これらの境界地点では、GSI は「対象地域外」で補正しませんが、GeoCore は連続性を保つため欠けた隅を0で埋めて補正を続けます。つまり GCVP は座標を出力し、その値は GSI とは異なります(GSI には値そのものが無い)。値が出るため、何も知らなければ「正しく補正された座標」と誤解しかねません。そこで GCVP は出力に CCQ ⚠️(分子<分母)を必ず付け、「この地点は4隅がそろっておらず、GSI の対象地域外=GSI とは挙動が分かれる」ことを知らせます。
まとめると——4隅がそろう地点(県庁所在地など大多数)では GCVP と GSI はおおむね1mm未満で一致し、CCQ は
n/n。4隅が欠ける境界地点では GSI は「対象地域外」、GCVP は連続性のため0埋め補正した座標を返し、CCQ は ⚠️。CCQ は、この「GSI と挙動が分かれる地点」を利用者が一目で判別するための指標です。補足(検証したステップについて):地震時補正の本体は、2003〜2011年の地震は JGD2000⇔JGD2011、2016・2024年の地震は JGD2011⇔JGD2024(B) のステップです。PatchJGD はこの JGD 系のステップを検証する公式ツールなので、各点を JGD 系座標で入力して確認しました(入力CSV自体は前回検証と同じ東京測地系ですが、GCVP が内部で JGD 系へ変換した上でこのステップを通ります)。
※ 当初、CSV一括変換の座標出力は境界地点で地震補正が入らず(無補正で非連続になる)不具合がありましたが、変換詳細と同じ0埋め補正へ統一する修正を適用済みです。上表の補正量は修正後の実測値で、変換詳細の表示・CCQ とも一致します。
5. 座標変換詳細の見方 — どこに CCQ が出るか
GCVP の「変換」タブで1点を変換すると、画面に 変換パラメータ詳細 が表示されます(CSV変換ではログ・各行にも出力)。CCQ は詳細の 冒頭(先頭) に表示されます。
実例として、テスト点 65 牡鹿半島東方沖A(東北沖2011) を東京測地系→jgd2024b に変換した実際の詳細ログを見てみます(全文はこちら:TOKYO-jgd2024b 詳細ログ(テキスト))。
(a) 冒頭の CCQ サマリ行
詳細の先頭に、その変換全体の CCQ が出ます。
■ 東京測地系->jgd2024b 変換パラメータ詳細
■ CCQ(座標変換クオリティー) ⚠️ CCQ 2/4
※ 4隅の一部が欠損し0埋め補正されたステップを含みます
⚠️ が付いていたら、海沿い・離島・補正範囲のふち で4隅が欠けている合図です。CCQ 4/4(記号なし)なら4隅すべて有効で、GSI 公式ツールと整合する変換です。
(b) 4隅補正値ブロック
各補正ステップには、補間に使った4隅の値が並びます。この点では、地震時補正(JGD2000→JGD2011 の東北沖2011)のステップが次のようになっています。
【JGD2000→JGD2011(WGS84) 補正(2/3)】
ステップ1: JGD2011(順算)
メッシュコード: 57414540
入力 緯度: 38.37083000° 経度: 141.63125000°
補正量 Δ緯度: -0.0323" Δ経度: +0.1136"
出力 緯度: 38.37082101° 経度: 141.63128155°
┌ 4隅補正値(双線形補間)
│ 左下[57414540] Δ緯度:-0.0646" Δ経度:+0.2272"
│ 右下[0] Δ緯度:+0.0000" Δ経度:+0.0000" ← データ無し(0埋め)
│ 左上[57414550] Δ緯度:-0.0648" Δ経度:+0.2272"
│ 右上[0] Δ緯度:+0.0000" Δ経度:+0.0000" ← 同上
└─────────────────────────
- メッシュコードが
[0]/Δがともに 0.0000″ の隅 は、補正データが無く0で埋められた隅です。 - この点は 左下・左上のみ有効=2隅 なので
⚠️ CCQ 2/4。0埋めした右側2隅のぶん、補正量は本来より小さく出ます(実データでは陸側フル補正の約半分)。
(c) 「補正エリア外」のステップ
同じログの他のステップ(Tokyo→JGD2000、JGD2011→jgd2024b)は「(補正エリア外)」と表示され、補正量0で素通りします。これらは4隅補間を伴わないため CCQ には数えません。CCQ の分母は、4隅補間を行ったステップ(この例では1ステップ=4)だけで構成されます。
測量成果として使う際は、
⚠️の地点は GSI 公式ツール(PatchJGD 等)の結果と必ず突き合わせてください。GeoCore は連続性のため0埋め補正した値を返しますが、GSI 側はその地点を「対象地域外」とします。
まとめ — CCQ の意義
- 座標変換は、地点を囲む 4隅 の補正値を双線形補間して求める。国土地理院は 4隅必須、GeoCore は 1隅でも計算(欠けた隅は0埋め)という違いがある。
- CCQ は、その変換で4隅がどれだけそろっていたかを
分子/分母で表す指標。4/4 は正常、⚠️ が付けば4隅欠けの注意。 - 4隅がそろう大多数の地点では、GCVP は GSI 公式ツールと1mm未満で一致する。CCQ が⚠️になるのは、海沿い・離島・補正範囲のふちなど 限られた地点 だけ。
- CCQ の価値は、その「限られた地点」を 利用者が一目で判別できる ことにある。値が出るからといって鵜呑みにせず、⚠️のときは公式ツールと照合する——測量・調査の現場で信頼して使うための、品質のものさしです。
関連記事
- GeoConverterPro の座標変換を国土地理院の公式ツールで全数検証する
- 座標変換対応表ガイド — 全変換経路を解説
- 補正量ヒートマップの読み方
- GeoCore の精度設計
- CSV一括変換の使い方
お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。
※ 用語について:本記事で使用している jgd2024b・jgd2024c・jgd2024d は、GeoCore の座標変換機能名であり、一般的な正式名称ではありません。
コメントを残す