セミダイナミック補正と定常時地殻変動補正の経年変化を可視化する — 震災余効(2011基準)と安定期(2023基準)の2系列で見る

,

セミダイナミック補正と定常時地殻変動補正の経年変化を可視化する — 震災余効(2011基準)と安定期(2023基準)の2系列で見る

セミダイナミック補正の変化量 jgd2024c差分 SemiDyna 2015−2011(三陸沿岸に集中)

毎年更新される 地殻変動補正パラメータ が「どの時期にどれだけ変わるのか」を、国土地理院配布のセミ・ダイナミック補正(SemiDyna)と定常時地殻変動補正(pos2jgd)について全ノード読み込み、水平補正量の変化をヒートマップで可視化しました。今回はセミ補正を 2つの基準(系列) に分けています。2011年(東日本大震災直後)を起点とする系列A と、2023年(安定期)を起点とする系列B です。同じ「経年変化」でも、震災直後と近年では性質がまったく違うことが見えてきます。GeoConverterPro(GCVP)の精度設計を支える内部検証の一環です。

着色値は水平補正量の変化 √(dB²+dL²)[秒]、タイトルの m はメートル換算。配色は jet、背景は水色、カラーバー単位は「秒」で全図共通です。ノード数は版により異なります(SemiDyna2011≈19,453、新版≈21,134)。

※ 図のラベルは小文字 jgd2024b / jgd2024c / jgd2024d(公式名称ではなく、地震時/セミダイナミック/定常時の3補正を区別する内部表記。公式名称は JGD2024 のみ)。基準成果の注意:セミ補正は 2011〜2025版が測地成果2011(JGD2011)基準2026版のみ測地成果2024(JGD2024)基準 です。


1. 系列A:2011基準 → 2015 — 東日本大震災の「余効変動」

2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)直後の基準(SemiDyna2011、元期2011-05-24)からの差です。変化は 三陸〜東北太平洋沿岸(39°N, 141.4°E付近)に集中し、東向き(海溝側)に膨らみます。最大水平変化は 2012: 0.55m → 2013: 0.57m → 2014: 0.74m → 2015: 0.88m と増加し、全国平均も 0.06→0.19m と約3倍に。増分は徐々に減衰しつつも大きく、地震直後の急速な 余効すべり・粘弾性緩和 を表します。

セミ補正 2012−2011 経年差分(最大0.55m) セミ補正 2013−2011 経年差分(最大0.57m)
セミ補正 2014−2011 経年差分(最大0.74m) セミ補正 2015−2011 経年差分(最大0.88m)

補足:2012年の最大点は火山性変動による硫黄島(24.7°N)で、Tohoku が主役になるのは2013以降です。


2. 系列B:2023基準 → 2026 — 余効が収まった「安定期」の緩やかな変化

近年(JGD2024整備前後)の差です。震災余効が収まり、変化は 南西諸島(石垣 24.5°N)や四国・南海側 の定常的なプレート運動が主体になります。最大は 2024: 0.18m → 2025: 0.18m → 2026: 0.27m と小さく、系列Aの 1/3 以下 です。

セミ補正 2024−2023 経年差分(最大0.18m) セミ補正 2025−2023 経年差分(最大0.18m)
セミ補正 2026−2023 経年差分(最大0.27m)

基準成果の注意:2023〜2025は測地成果2011基準・2026は測地成果2024基準のため、2026−2023 の増分には基準成果の改定分が一部含まれます(純粋な地殻変動だけではありません)。


3. 定常補正の経年差分(基準: pos2jgd_202502 ITRF2014)

定常時地殻変動補正(pos2jgd)を、202502 を基準に直近版まで差分したものです。最大 ~0.14m(伊豆〜東北帯、34.8°N付近)。202601 の差分には ITRF2014→ITRF2020 の基準系移行分も含まれます。

定常補正 202504−202502 経年差分 定常補正 202507−202502 経年差分
定常補正 202510−202502 経年差分 定常補正 202601 ITRF2020−202502 経年差分(基準系移行含む)
定常補正 202604 ITRF2020−202502 経年差分

4. 同一エポックではセミ補正と定常補正のパラメータは一致する

日時が近い版どうしを引き算したところ、同一エポックなら SemiDyna と pos2jgd の値は一致しました(差分0)。

比較 結果
SemiDyna2025 − pos2jgd_202502_ITRF2014 差分0(同一エポック)
SemiDyna2026 − pos2jgd_202601_ITRF2020 差分0(同一エポック)

全ノード・dB / dL / dH の全成分で差分0でした。両者は同一の電子基準点F5解・同一基準成果から作られるため、エポックが一致すれば値が同じになるのは当然です。つまり 2製品の違いは「値」ではなく、更新頻度・適用期間・配布形式にあります。座標変換の実装上、同一時点ならどちらを使っても結果は変わりません。

SemiDyna2025 と pos2jgd 202502 の差分はゼロ SemiDyna2026 と pos2jgd 202601 の差分はゼロ

5. 補足: pos2jgd_202601 と 202604 は同一エポックでも完全同一ではない

202601 と 202604 はどちらもエポックが 2026-01-01 ですが、全ノードが同じわけではありませんでした。2,284 ノードが異なり、東北沖(40.0°N, 141.9°E)で最大 ~0.09m の局所的な更新が見られます。202604 は適用期間を延長しつつ、一部地域の解を改訂して再公開された版と考えられます。「エポックが同じ=中身も完全同一」とは限らない、という運用上の注意点です。

1-4月の変化量 jgd2024d差分

まとめ

  • 系列A(2011基準→2015)は東日本大震災の余効変動。三陸沿岸に集中し 0.55→0.88m と急増(減衰しつつ大きい)。
  • 系列B(2023基準→2026)は安定期の緩やかな変化。南西諸島・南海側の定常運動が主体で最大 0.18→0.27m(系列Aの1/3以下)。
  • 定常補正(202502基準)の変化は直近まで最大 ~0.14m。
  • 同一エポックなら SemiDyna と pos2jgd は一致。違いは値ではなく更新頻度・適用期間・配布形式。
  • 同一エポックでも再公開版(202601 vs 202604)は局所改訂されることがあるので、版の取り違えに注意。

座標変換アプリの立場では、「どの版・どのエポック・どの基準成果のパラメータを使っているか」を取り違えないことが精度管理の要です。GeoConverterPro はこうした全数検証を踏まえて、版・エポック・基準成果の整合を意識した実装を行っています。


関連記事(参考情報)


出典

  • 国土地理院「プレート運動による地殻変動の補正(定常)」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/semidyna.html
  • 国土地理院「地殻変動補正」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/chikakuhendo-hosei.html
  • 国土地理院「公共測量における地殻変動補正パラメータについて」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/semidyna-seika.html
  • 解析スクリプト・データ: 本サイト内部検証(3-test/idokido-analysis、SemiDyna2011〜2026・pos2jgd各版)

お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP