BIM/CIMの「JGD2011,TP/9(X,Y),H」とは? — 3次元モデルの座標参照系を1行で書く国土交通省のルール

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BIM/CIMの「JGD2011,TP/9(X,Y),H」とは? — 3次元モデルの座標参照系を1行で書く国土交通省のルール

BIM/CIMの「JGD2011,TP/9(X,Y),H」とは? — 3次元モデルの座標参照系を1行で書く国土交通省のルール

「測地系,鉛直基準面/水平位置の座標系,鉛直座標系」という並びです。 国土交通省の「BIM/CIM取扱要領」(令和7年3月)が定める書き方で、JGD2011,TP/9(X,Y),H なら「日本測地系2011・東京湾平均海面・平面直角座標系第Ⅸ系・標高」を意味します。EPSGコードのように1つの番号で済ませるのではなく、水平と鉛直を分けて書くのがこの記法の要点です。


どこに書くことになっているのか

BIM/CIM取扱要領の「1-6 3次元モデルの座標及び単位・基準点」に、こう定められています。

3次元モデルの座標は、平面直角座標とし、鉛直座標はT.P.の使用を標準とする。座標の単位はm(メートル)に統一する。

そして、作成した3次元モデルの座標参照系・単位・使用した基準点の情報を「3次元モデル作成引継書シート」(BIM/CIM実施報告書に含まれる)へ記載することが求められます。3次元モデルそのものの中に座標系が書いてあるとは限らないので、シート側で担保するという設計です。

つまりBIM/CIMでは、座標系は「ファイルに書いてあるかどうか」の問題ではなく、引継書に1行で明記する義務になっています。

1行の文法

記述ルールは、国土地理院の「地理空間データ製品仕様書作成マニュアル」等に基づくものとされ、次の並びです。

測地系 , 鉛直基準面 / 水平位置の座標系 , 鉛直座標系

区切りがカンマ・スラッシュ・カンマの順になっている点に注意してください。「測地系」と「鉛直基準面」がカンマで結ばれ、そこからスラッシュで「座標系」側へ渡します。

要領の例がそのまま分かりやすい形です。

記述 読み下し
JGD2011,TP/9(X,Y),H 日本測地系2011、東京湾平均海面/平面直角座標系第Ⅸ系、標高

使える略称の一覧

要領の表-3で定義されている略称です。

測地系(水平位置の基準面)

略称 内容
JGD2011 日本測地系2011
JGD2000 日本測地系2000(参考)
TD 日本測地系(Tokyo Datum・参考)
WGS84 World Geodetic System 1984(参考)

鉛直基準面

略称 内容
TP 東京湾平均海面
KP 北上川(参考)
YP 利根川(参考)
AP-ANT 荒川・中川・多摩川(参考)
OP 淀川(参考)
AP-Y 吉野川(参考)
BSL 琵琶湖(参考)

水平位置の座標系

略称 内容
1(X,Y)19(X,Y) 平面直角座標系 第Ⅰ系〜第ⅩⅨ系
(B,L) 緯度・経度(参考)

平面直角座標系第Ⅰ系から第ⅩⅨ系までの全国の区域を示した地図

鉛直座標系

略称 内容
H 標高(基準平均海面からの高さ)
h 楕円体高(参考)

「参考」と付いている値は、標準ではないが書く必要が生じたときの表記という位置づけです。標準は JGD2011TPn(X,Y)H の組み合わせになります。

書き分けの例

略称を組み合わせると、こうなります。

状況 記述
東京都内(第Ⅸ系)・標高 JGD2011,TP/9(X,Y),H
長崎県(第Ⅰ系)・標高 JGD2011,TP/1(X,Y),H
北海道東部(第ⅩⅢ系)・標高 JGD2011,TP/13(X,Y),H
淀川水系の基準面を使う場合 JGD2011,OP/6(X,Y),H
緯度経度・楕円体高で持っている場合 JGD2011,TP/(B,L),h

実務でつまずくのは、この3か所

1. 系が2つにまたがる現場

要領は、地形モデル・地質モデル・統合モデル等で複数の平面直角座標系が使われる場合は、いずれか一つの系に統一すると明記しています。県境をまたぐ路線や、系境界に近い区間ではふつうに起きる話です。

統一するということは、片方のモデルを別の系へ変換して作り直すという意味です。系をまたいだ変換は投影を通しての座標変換になるので、変換ソフトを使うにせよ、系番号と変換方向を引継書に残しておかないと後段で追えなくなります。

2. T.P.以外の基準面

要領は「鉛直座標の基準面はT.P.を標準とするが、A.P.(荒川水系基準面)、O.P.(淀川水系基準面)等の他の基準面で作成する必要がある場合は、当該基準面の標高に変換して作成する」としています。

河川の計画高は地域基準面で書かれていることが多く、そのまま3次元モデルに持ち込むとT.P.との差だけ丸ごとずれます。基準面の差はメートル級なので、モデルとしては「気づかないほど小さい」のではなく「明らかに違う」形で出ます。

3. X軸とY軸が逆

要領はわざわざ図まで付けて、「平面直角座標系における測量成果では南北方向がX軸(北向きが正)、東西方向がY軸(東向きが正)であり、一般的なCAD等で用いられる数学座標系(右手系)と逆になる」と注意しています。

BIM/CIMではCADソフトと測量成果を行き来させるので、この取り違えがそのままモデル全体の反転として現れます。詳しくは平面直角座標のXとYはどっちが北?にまとめてあります。

基準点情報と「補正計算」欄

座標参照系の1行と並んで、引継書シートには使用した基準点を書く欄があります。要領が挙げている項目はこうです。

  • 点名/成果ID/等級(管理者名、新点かどうか)
  • 調製年月日(成果表)
  • X座標値(m)・Y座標値(m)・標高(m)
  • 補正計算(「不要」または「済(補正パラメータ名)」)

要領の記載例では、補正計算欄に 済(PatchJGD_tokachi2003b.par,Ver1.0.0) のようにパラメータファイル名とバージョンまで書かせています。地震や火山活動に伴う補正パラメータが公開されている場合は、変動発生以前の座標・標高に対して補正を行うというのが要領の指示です。

「どの成果表の値を、どのパラメータで補正して使ったか」がファイル名まで残る——これは座標変換の追跡可能性としてかなり強い仕様です。逆に言えば、この欄が空欄のまま回ってきた成果は、補正済みかどうかを外から判定できません

高さの世代は、1行では区別できない

ひとつ注意が必要なのは、JGD2011,TP/9(X,Y),HHどの世代の標高成果かをこの記法が持っていない点です。

2025年4月1日に国家基準点の標高成果が改定され、成果は「測地成果2024」に切り替わりました。ただし変わったのは高さ(標高)であって、緯度経度や平面直角座標といった水平位置ではありません。しかも整備済みの公共基準点の標高成果は測地成果2011のまま残ります(詳しくはJGD2011とJGD2024を混ぜたときに何が起きるか)。

要領の略称表(令和7年3月時点)には測地系の欄に JGD2024 は載っておらず、鉛直座標系も Hh の2種類だけです。したがって高さの世代を判別する手がかりは、座標参照系の1行ではなく、基準点情報の「調製年月日」と「補正計算」欄のほうにあります。引継ぎの際は、この2欄を空欄にしないことが実質的な防波堤になります。

納品ファイル形式との関係

要領が定める納品形式はモデル種別で分かれています。

3次元モデル 納品ファイル形式
地形モデル オリジナルファイル+J-LandXML
地質・土質モデル オリジナルファイル
線形モデル オリジナルファイル+J-LandXML
土工モデル オリジナルファイル+J-LandXML
構造物モデル オリジナルファイル+IFC
統合モデル オリジナルファイル

J-LandXMLには座標系を書く要素がありますが必須ではなく、書ける内容も文字列に限られます(LandXMLに測地系は書いてある?)。IFC側にも座標参照系を持つ仕組みはありますが、出力するソフトウェアが書き出すとは限りません。「ファイルの中身を信用せず、引継書シートを正とする」という要領の組み立ては、この現状に対する現実的な答えになっています。

受け取ったモデルで最初に確認する4点

  1. 座標参照系の1行があるか(測地系,鉛直基準面/座標系,鉛直座標系 の形になっているか)
  2. 系番号が現場の位置と合っているか。複数系にまたがる案件なら、どちらへ統一したか
  3. 鉛直基準面が TP 以外なら、標高への変換が済んでいるか
  4. 基準点の「調製年月日」と「補正計算」欄が埋まっているか

この4点が揃っていれば、モデルの座標をどう扱えばよいかは決まります。逆に1行目が無いモデルは、座標を疑うところから始めるしかありません。

まとめ

  • BIM/CIMの座標参照系は 測地系,鉛直基準面/水平位置の座標系,鉛直座標系 の1行で書く。例:JGD2011,TP/9(X,Y),H
  • 標準は平面直角座標・T.P.・単位はm。3次元モデル作成引継書シートに記載する
  • 複数の平面直角座標系にまたがるときはいずれか一つの系に統一する
  • A.P.・O.P.等の地域基準面は、T.P.基準の標高に変換してからモデル化する
  • 測量成果はX=北・Y=東で、CADの数学座標系とは
  • 基準点情報には調製年月日補正計算(パラメータファイル名まで)を書く
  • H の世代(測地成果2011か2024か)は座標参照系の1行では区別できない。上記2欄が判定材料になる
  • 納品形式は構造物モデルがIFC、地形・線形・土工モデルがJ-LandXML

出典

  • BIM/CIM取扱要領(令和7年3月)国土交通省 大臣官房参事官(イノベーション)グループ https://www.mlit.go.jp/tec/content/001873435.pdf
  • 地理空間データ製品仕様書作成マニュアル(令和2年11月・国土地理院) https://www.gsi.go.jp/common/000259946.pdf
  • BIM/CIMポータルサイト(国土技術政策総合研究所) https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimindex.html

本記事は上記要領の令和7年3月版の記載に基づきます(2026年9月時点)。要領・ガイドライン類は改定されるため、実案件では必ずBIM/CIMポータルサイトで最新版を確認してください。


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