国土数値情報の座標系はどれ? — 製品仕様書の「JGD 2011 / (B, L)」と、水平位置25mというデータ品質

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国土数値情報の座標系はどれ? — 製品仕様書の「JGD 2011 / (B, L)」と、水平位置25mというデータ品質

国土数値情報の座標系はどれ? — 製品仕様書の「JGD 2011 / (B, L)」と、水平位置25mというデータ品質

製品仕様書に書いてあります。

国土数値情報からダウンロードしたシェープファイルを、他のデータと重ねる直前。この座標系で合っているのか、確信が持てないまま読み込んだことはありませんか。

答えはデータ種別ごとのPDF製品仕様書、その「参照系」の章です。行政区域データなら「JGD 2011 / (B, L)」。ただし——座標系を正しく合わせても、このデータには25mという別の数字が付いてきます。


座標系はどこに書いてあるか

国土数値情報のデータには、種別ごと(行政区域はN03、鉄道はN02、河川はW05……)に製品仕様書のPDFが用意されています。そのなかに必ず「参照系」という章があり、次の一行が置かれています。

座標参照系は、参照系識別子:“JGD 2011 / (B, L)”とする。この表記は、JIS X 7115 附属書2に規定された表記方法に準拠しており、JGD2011は日本測地系2011、(B, L)は測地座標系による緯度、経度であることを示している。
(国土数値情報(行政区域)製品仕様書 第4.0版・令和7年3月)

読み方は3つに分かれます。

記号 意味
JGD 2011 日本測地系2011(世界測地系)
(B, L) 測地座標系による緯度・経度。B=緯度、L=経度
JIS X 7115 附属書2 この書き方そのものを定めている規格

つまり平面直角座標系ではありません。X・Yのメートル値ではなく、度で入っています。QGIS等で読み込むときのEPSGコードの決め方は、この一行を確認してから選ぶのが順序です。

重要なのは、これがN03という一つのデータ種別についての記述だということ。 種別ごとに仕様書が別なので、「国土数値情報はすべてこれ」と一括りにせず、使うデータの仕様書を都度開くのが安全です。


空間だけでなく、時間にも参照系がある

同じ章には、あまり注目されないもう一行があります。

時間参照系は、参照系識別子:“GC / JST”とする。(中略)GCはグレゴリオ暦(西暦)、JSTは日本標準時であることを示している。

座標に基準があるように、日付にも基準があると明記されているわけです。行政区域データの時間範囲は「令和6年1月1日時点」と仕様書に書かれており、この日付がJSTで読まれることまで規定されています。

地味な一行に見えますが、実務では効きます。市町村合併の前後で境界が変わるデータを扱うとき、「どの時点の姿か」がデータ自身に定義されている——位置と同じくらい、時刻も基準を明示しないと一意にならないという思想が、そのまま形になっています。


2016年に、座標系は変わっていた

製品仕様書の冒頭には改訂履歴が付いています。行政区域データのものを追うと、次の一行が見つかります。

更新日 改訂内容
第2.0版 2010年3月 JPGISのバージョンアップに伴う改訂(符号化仕様はGML準拠)
第2.1版 2012年3月 GML形式への変換作業に伴い一部見直し
第2.2版 2014年3月 支庁名を支庁・振興局名に変更
第2.3版 2016年3月 座標系を JGD2011 / (B, L) に変更
第3.0版 2021年3月 JPGIS2014に対応
第4.0版 2024年3月 属性項目の定義を変更(後述)

2016年3月に座標系が変更されているという事実が、履歴に残っています。それ以前にダウンロードした行政区域データを手元に持っている場合、いま落としたものと同じ座標系だと決めつけられません。

年度違いのデータを重ねる作業は、それ自体が新旧の測地系を混ぜる事故の温床です。古いファイルを再利用するときは、ファイル名の年度だけでなく、そのときの製品仕様書の版を確認する——履歴が公開されているのは、そのためでもあります。


ここが本題——水平位置の標準偏差は25m

製品仕様書には「データ品質」という章があり、位置正確度の適合品質水準が数値で書かれています。行政区域データの値は次のとおりです。

品質要素:位置正確度・絶対正確度
データ品質評価尺度:原典資料が地図であるものに関して、地図と原典資料、背景図(地理院地図)を画面上で原典資料の縮尺で重ねて表示し、位置のズレの最大値を測定する。
適合品質水準:水平位置の標準偏差:25m

25メートルです。

座標変換の世界ではミリからセンチの話をしています。セミダイナミック補正のパラメータは数センチ単位、測地成果の改定も数十センチのオーダー。ところが行政区域データそのものの品質基準は、その3桁上にあります。

これは欠陥ではなく、設計です。仕様書自身が目的を「国土形成計画、国土利用計画などの国土形成や土地・不動産関連分野等の策定や実施の支援」と書いているとおり、広域の政策検討に使う縮尺のデータとして作られています。原典資料も数値地図(国土基本情報)などの地図であり、地図から起こしたものである以上、元図の縮尺以上の位置精度は出ません。

実務上の含意は、はっきりしています。

  • 境界線の位置を根拠にした判断はできない。ある点が市域の内か外かを、境界から数十メートル以内で争うような使い方には向きません
  • 座標変換で精度は上がらない。JGD2011からJGD2024へ変換しても、元の25mは25mのまま残ります。変換は基準を揃える作業であって、精度を作る作業ではありません
  • 他のデータと重ねたときのズレは、まず品質水準を疑う。座標系の設定を何度見直しても消えないズレは、そもそもデータの品質範囲内かもしれません

土地の権利に関わる境界を扱うなら、別のデータを取りに行く必要があります。 登記所備付地図であればXML形式で座標が公開されており、系番号も明示されています。cm級を求める基図なら基盤地図情報側です。用途に対して品質水準が合っているかを先に見る——製品仕様書がデータ品質の章を持っているのは、この判断をさせるためです。


経緯度で配られているので、面積は直接測れない

日本全国を19の区域に分ける平面直角座標系の系区分図

(B, L)=緯度経度で入っているということは、メートルの世界ではないということです。ポリゴンの面積を計算しようとしても、度の二乗が出てくるだけで意味を持ちません。

面積や距離が必要なら、平面直角座標系へ投影するか、楕円体面上の面積を求める関数を使います。どちらを選ぶかで結果が変わる話は平面直角座標系での面積計算の回にまとめました。

逆に言えば、全国を1枚で扱えるのが経緯度の利点です。平面直角座標系は日本を19の系に分割しているので、系をまたぐデータを1つのファイルに入れられません。全国データを配布する側から見れば、経緯度は自然な選択になります。農地の筆ポリゴンが平面直角座標系から経緯度へ切り替えた理由も、まさにこれでした。


3世代のデータ形式が並んでいる

国土数値情報のダウンロードサイトには、時代の違う3系統が同時に置かれています。ここも取り違えの原因になります。

系統 開始 形式 現在の状況
JPGIS2.1準拠 2009年に規格変更・2010年度から配信 XML(GML)、シェープファイル、一部GeoJSON 現行。毎年20データ程度を新規公開・更新
JPGIS1.0準拠 2005年度に策定 XML 更新停止(データは残置)
旧統一フォーマット準拠 1974年度(高潮・津波テーブルデータ) テキスト・CSV/変換版のGML・シェープ 地価公示・都道府県地価調査・土地利用メッシュ・将来推計人口のCSVのみ更新

最初のデータ整備が1974年度というのは、日本のGISデータとしてはかなり古い部類です。半世紀ぶんの形式の変遷が、そのままサイトの構造に残っています。

現行のJPGIS2.1準拠データの配布仕様は、行政区域データの場合、GML(JPGIS 2014 附属書12)、文字集合UTF-8、名前空間 https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/schemas/ksj-app と規定されています。シェープファイル版を使うなら、prjファイルの中身が仕様書の記述と一致しているかを一度は確認しておくと安心です。prjが何を書いているかはShapefileのprj/WKTの回にまとめました。


属性側も版で変わる——2024年3月の改称

第4.0版(2024年3月改訂)では、属性項目の定義がまとめて見直されています。

  • [振興局名]→ [北海道の振興局名]へ改称
  • [郡・政令都市名]→ [郡名]とし、郡の名称のみを格納する項目へ変更
  • [市区町村名]は市町村および特別区を格納する項目に変更(政令指定都市の市名はここへ、行政区は分離)
  • 政令指定都市の行政区名]を新設
  • [行政区域コード]→ [全国地方公共団体コード]へ改称、多重度を[1]に変更

列名を決め打ちしたスクリプトは、この版を跨ぐと動きません。 とくに政令指定都市の扱いが変わっているので、市区町村単位で集計する処理は結果そのものが変わります。

全国地方公共団体コードは、JIS X 0401の都道府県コード2桁とJIS X 0402の市区町村コード3桁を結合した5桁です。住所と座標を突き合わせる作業では、位置参照情報側のコード体系と揃っているかも確認どころになります。


実務のチェックリスト

確認すること どこを見るか
座標参照系 製品仕様書「参照系」章の座標参照系(例:JGD 2011 / (B, L))
いつ時点のデータか 同「適用範囲」の時間範囲+時間参照系(GC / JST)
座標系が途中で変わっていないか 製品仕様書冒頭の改訂履歴
求める精度に足りるか 同「データ品質」章の位置正確度(行政区域は水平位置の標準偏差25m)
属性の列名が今の版か 同「データ内容及び構造」章の応用スキーマ文書
形式の世代 JPGIS2.1準拠か、JPGIS1.0準拠か、旧統一フォーマットか
使ってよい用途か 各データの個別ページ「このデータの使用許諾条件」(商用可/非商用)

最後の行だけ性質が違いますが、実務では最初に確認すべき項目です。国土数値情報はデータ種別ごとに利用条件が異なり、「非商用」のものは販売する製品への同梱ができません。加工して使う場合の出典表記も規約で定められています。


まとめ

  • 国土数値情報の座標系は、データ種別ごとの製品仕様書「参照系」章に書かれている
  • 行政区域データは 「JGD 2011 / (B, L)」=日本測地系2011の緯度・経度。平面直角座標系ではない
  • 時間参照系「GC / JST」も定義されている。位置と同じく、日付にも基準がある
  • 行政区域データは2016年3月(第2.3版)に座標系がJGD2011へ変更されている。古いファイルの再利用は版の確認から
  • 位置正確度の適合品質水準は水平位置の標準偏差25m。座標変換で精度は上がらない。境界の位置を根拠にした判断には向かない
  • 経緯度なので面積は直接測れない。ただし全国を1枚で扱えるのが利点
  • JPGIS2.1準拠/JPGIS1.0準拠/旧統一フォーマットの3世代が並んでいる。現行はJPGIS2.1準拠
  • 2024年3月の第4.0版で属性の列名が改称されている。列名決め打ちの処理は要確認

座標系を合わせる作業と、データの精度を見極める作業は別物です。製品仕様書は、その両方を1つのPDFに書いてくれている——開く価値のある10ページです。

出典

  • 国土交通省「国土数値情報ダウンロードサイト」 https://nlftp.mlit.go.jp/
  • 国土交通省 政策統括官付 地理空間情報課「国土数値情報(行政区域)製品仕様書 第4.0版」令和7年3月 https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/product_spec/KS-PS-N03-v4_0.pdf
  • 国土交通省「国土数値情報のデータ形式」 https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ksj_dataformat.html
  • 国土交通省「よくある質問(FAQ)」 https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/other/faq.html

本記事の記述は2026年9月時点で公表されている資料に基づきます。座標参照系・データ品質・改訂履歴の記述は、いずれも行政区域データ(N03)の製品仕様書第4.0版に基づくものです。他のデータ種別では値が異なる場合がありますので、実際に使うデータの製品仕様書を必ずご確認ください。


GeoConverter Proの地図画面。世界測地系と旧日本測地系の座標を同時に表示している

手元の座標がどの基準のものか迷ったときは、地図の上で2つの測地系の値を並べて確かめられます。

GeoConverter Pro(座標変換アプリ)
https://apps.apple.com/jp/app/geoconverter-pro/id6761740960


次に確認する


入門から通しで読むなら: 『日本の測地系がわかる本』 — 旧日本測地系から JGD2024 まで、座標がズレる理由と実務での扱いを1冊にまとめました(Kindle Unlimited 対応)


開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


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