基盤地図情報とは — GML形式の中身・DEM格子の精度・標高改定への対応

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基盤地図情報とは — GML形式の中身・DEM格子の精度・標高改定への対応

基盤地図情報とは — GML形式の中身・DEM格子の精度・標高改定への対応

基盤地図情報は、国土地理院が無償で提供する全国の地図データです。道路縁・建築物外周線・行政界などの「基本項目」と、「数値標高モデル(DEM)」の2本立て。ファイル形式は JPGIS(GML)、座標は緯度経度で入っています。使う前に押さえるべき勘どころは3つ——提供時期でファイル仕様が違う/DEMの格子は「秒」で刻まれていて正方形ではない/標高改定の前後で高さがずれる、です。順に見ていきます。

データ形式と座標系のシリーズとして、Shapefileの.prjを読むDXFに測地系情報はないSIMA形式入門の続きにあたる回です。

座標変換の流れ(測地系の関係図)


1. 何が配られているか

基盤地図情報ダウンロードサービスで手に入るものは、大きく「基本項目」と「数値標高モデル」に分かれます。

区分 中身 ファイル単位 精度の目安
基本項目 測量の基準点、海岸線、行政区画の境界線及び代表点、道路縁、軌道の中心線、標高点、水涯線、建築物の外周線、町字の境界線及び代表点、街区の境界線及び代表点(10項目) 2次メッシュ 縮尺1/2,500相当(都市計画区域)/1/25,000相当(区域外)
数値標高モデル 1m・5m・10mメッシュの標高格子 3次メッシュ(10mメッシュは2次メッシュ) 下表のとおり

数値標高モデルは、元になった測量の方法によって種類と精度が分かれています。

種類 名称 格子の間隔 基となる測量 高さ精度(RMS誤差)
1mメッシュ DEM1A 0.04″×0.04″(約1m四方) 航空レーザ測量 0.3m以内 ※
5mメッシュ DEM5A 0.2″×0.2″(約5m四方) 航空レーザ測量 0.3m以内 ※
DEM5B 同上 写真測量(地上画素寸法20cm) 0.7m以内
DEM5C 同上 写真測量(地上画素寸法40cm) 1.4m以内
10mメッシュ DEM10A 0.4″×0.4″(約10m四方) 火山基本図の等高線 2.5m以内
DEM10B 同上 地形図の等高線 5m以内

※ 格子内に航空レーザ計測点(グラウンドデータ)がある場合の精度。無い場合は2.0m以内。

精度も計測時期も違うデータが隣り合うことがあり、その境界では表示に不整合が出る場合がある、と国土地理院も注意を促しています。5mメッシュと10mメッシュを継ぎ足して広域を作るときは、この段差を意識しておく必要があります。


2. 形式は JPGIS(GML)— 仕様書のバージョンを見る

ダウンロードされるファイルは JPGIS(GML)形式、実体は XML です。ここで実務上ひとつ落とし穴があるのは、提供時期によって応用スキーマとファイル仕様書のバージョンが違うという点です。

提供時期 ファイル仕様書 XMLスキーマ定義
2026-07-31 以降 5.3 5.1(2025-04-01 以降)
2025-07-31 〜 2026-07-30 5.2 5.1
2025-04-01 〜 2025-07-30 5.1 5.1
2023-11-30 〜 2025-03-31 5.0 5.0
2021-05-21 〜 2023-11-29 4.1 4.2

自前でパーサを書く場合はもちろん、既製のツールを使う場合でも、手元のファイルがいつ提供されたものかで読み方が変わり得ます。数年前にダウンロードしたデータと最新のデータを同じスクリプトに流し込んで結果が合わない、というのはよくある事故です。ファイルの提供時期と仕様書のバージョンは、データと一緒に控えておくのが安全です。

TKY2JGD.parの中身を読むでも書いたとおり、「形式の仕様書を先に読む」のは遠回りに見えていちばん速い道です。


3. 格子は「秒」で刻まれている — メートルの正方形ではない

ここがいちばん座標変換らしい論点です。上の表をもう一度見ると、DEMの格子間隔が 0.04″・0.2″・0.4″ と、メートルではなく角度の秒で定義されています。つまり基盤地図情報のDEMは、緯度経度の格子であって、平面上の正方形の格子ではありません。

秒をメートルに直すと、こうなります。

方向 1秒あたりの長さの目安
緯度方向(南北) 約31m(日本付近ではほぼ一定)
経度方向(東西) 約25m(北緯35°付近)/緯度が高いほど短くなる

経度方向は緯度の余弦に比例して縮むので、同じ「0.2秒」でも北海道と沖縄では東西方向の実長が違います。「約5m四方」という呼び名はあくまで目安で、厳密な正方格子ではない、ということです。

格子形式のデータ(ISG/GML)のイメージ

実務では次のような形で効いてきます。

  • 平面直角座標系に変換すると格子がゆがむ — 緯度経度の等間隔格子を平面に投影すると、南北方向と東西方向で間隔が変わり、さらに緯度によっても変わります。「5mピッチのラスタ」としてそのまま扱うと、面積・体積・傾斜の計算がずれます
  • リサンプリングが必要になる — GIS や CAD で正方グリッドを前提とする処理に渡すなら、平面直角座標系に投影したうえで格子を組み直す工程が要ります
  • 標高点の内挿は緯度経度空間で行うのが素直 — 4隅の格子点から1点を求める内挿は、変換前の緯度経度空間で行うほうが、格子のゆがみを考えなくて済みます(グリッド補間の実装ジオイドモデルの内挿計算と同じ考え方です)

緯度経度と平面直角座標系のあいだで長さの扱いが変わる話は、面積を緯度経度のまま計算してはいけないでも扱いました。DEMの格子は、その問題がデータの構造そのものに埋まっている例だと言えます。


4. 標高改定への対応 — 補正ツールが用意されている

もうひとつ、いま基盤地図情報を触るなら避けて通れないのが標高成果の改定です。測地成果2024への移行にともなって全国の標高成果が改定されたため、改定前に作られたDEMの標高値と、改定後の水準点成果は、そのままでは同じ土俵に乗りません。

国土地理院は 「基盤地図情報等パラメータ補正ツール」 を配布しており、補正パラメータを使って標高改定後に合わせたDEMへ補正したり、逆に改定前へ戻したりできます。

項目 内容
適用対象 航空レーザ測量由来の DEM1A・DEM5A、写真測量由来の DEM5B・DEM5C
使うパラメータ 「測地成果2024移行のための水準点標高補正」(hyokorevBM_jgd2024_h.par
使わないもの 「基準面補正パラメータ(Hrefconv2024.isg)」は不要
方向 改定後への補正・改定前への逆補正の両方に対応

「どちらの標高で作られたDEMか」を取り違えると、数十cm規模の食い違いが静かに紛れ込みます。高さの取り違えを防ぐ考え方は測地成果2011と2024を混ぜないに整理してあるとおりで、データの「いつの成果か」を、値そのものと同じ重さで管理するのが基本です。

楕円体高・標高・ジオイド高の関係

なお、GNSS で得られる楕円体高から標高を出す話は楕円体高から標高へ(ジオイド2024)にまとめています。DEMの標高値は「標高」、GNSSの生の高さは「楕円体高」で、比較するにはジオイド高を挟む必要があります。


5. 使う前のチェックリスト

確認すること なぜ
そのファイルはいつ提供されたものか 応用スキーマ・ファイル仕様書のバージョンが変わる
DEMの種類(DEM1A/5A/5B/5C/10A/10B)は何か 高さ精度が0.3m〜5mまで大きく違う
標高改定の前後どちらの成果か 補正ツールの適用要否が変わる
種類の違うDEMを継ぎ足していないか 境界で段差・不整合が出る
格子を正方形として扱っていないか 秒単位の格子は平面上では正方形にならない
複製・使用の承認が必要な用途か 基盤地図情報は基本測量成果

最後の項目は忘れられがちですが、基盤地図情報は基本測量成果なので、利用の仕方によっては測量法にもとづく複製・使用の申請が必要になります。国土地理院は測量成果ワンストップサービスで申請を受け付けています。用途が決まった段階で、一度は公式の案内を確認しておくのが安全です。


GeoConverter Pro との接点

基盤地図情報そのものを読むアプリではありませんが、そこから取り出した座標を別の測地系・座標系へ移すところは GeoConverter Pro(GCVP)の担当範囲です。


まとめ

  • 基盤地図情報は JPGIS(GML)形式。提供時期でファイル仕様書・応用スキーマのバージョンが違う
  • DEMの格子は 角度の「秒」で定義されており、メートルの正方格子ではない。緯度によって東西方向の実長が変わる
  • DEMは種類ごとに高さ精度が 0.3m〜5m と大きく違う。継ぎ足すと境界に不整合が出ることがある
  • 標高改定には 「基盤地図情報等パラメータ補正ツール」 が用意されている。使うのは水準点標高補正のパラメータ
  • 基本測量成果なので、用途によっては複製・使用の承認が必要

出典

  • 国土地理院「基盤地図情報ダウンロードサービス ヘルプ」 https://service.gsi.go.jp/kiban/app/help/
  • 国土地理院「基盤地図情報サイト」 https://www.gsi.go.jp/kiban/
  • 国土地理院「基盤地図情報に関するよくある質問と回答」 https://www.gsi.go.jp/kiban/faq.html
  • 国土地理院「全国の標高成果の改定」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/hyoko2024rev.html
  • 国土地理院「測量法に基づく基本測量成果の複製・使用に関する申請について」 https://www.gsi.go.jp/LAW/2930-index.html

本記事に挙げたバージョン・精度・ツールの適用範囲は執筆時点(2026年8月)の公開情報にもとづく参考情報です。1秒あたりの長さは概算値であり、実際の計算では使用する楕円体の値で求めてください。最新の内容は必ず国土地理院の一次情報でご確認ください。

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