
アプリ開発者がKindle本を出すまで — 「日本の測地系がわかる本」制作全記録(連載①)
GeoConverterPro(GCVP)・GeoPrism JP(GPRM)・GeoDiveExa(GDE)のブログでは、これまで座標変換や測地系のトピックを一つずつ記事にしてきました。今回はその延長線上で、Kindle電子書籍「日本の測地系がわかる本」を1冊作った制作記録を、連載としてお届けします。この記事はその入口です。
なぜ本を書くことにしたか
日本の測地系は、TOKYO(旧日本測地系)→ JGD2000 → JGD2011 → JGD2024 と、この百数十年で何度も姿を変えてきました。2002年には全国の座標が一斉に約400m「引っ越し」、2011年の東日本大震災では基準点そのものが数mも動き、2025年4月には全国の標高が最大約60cm改定されています。
この一連の流れを、ブログ記事は「点」としてすでに数十本カバーしてきました。ですが、初心者が最初の1本から順番に読めば全体の物語がつながる——という「線」でまとめた入門書は、探した範囲では見当たりませんでした。分散した知識を体系化することに価値があると判断し、本の執筆に踏み切りました。
本音1:この辺の説明を人にするのは大変なのです。これ見といてで済ましたいのです。
本音2:Claude Fable5 が7/7まで使えるので、使えるうちに使っちまえ。どれだけ賢いのかな?
制作の全体像
企画から出版準備まで、実際にかかったのはわずか2日です。ざっくりの流れは次のとおりです。
本音3:作成は2日でもAmazonで販売するために本人認証が必要でした。その認証書類はMyNoに対応していませんでした。対応している運転免許証はMyNoに投合したばかりでありません。結局明日の朝、免許センターに行って、運転免許証の再発行を行う羽目になりました。AIさんは優秀ですがMyNoやAmazonはどうにかしろ!!
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 企画 | 全体企画書・画像企画書・設計図・作成方法など、A〜J番の企画文書を積み上げて方針を固める |
| 執筆 | 既存ブログ記事80本超を素材に、時系列を背骨にした章立てへ再構成。AIサブエージェントに複数章を並行執筆させる場面もあった |
| 図版 | matplotlibでの新規作図と、ブログ既存画像の流用を組み合わせる |
| レビュー | AIによる複数系統の辛口レビュー(内容評価・構成評価など)を経て、事実誤りや説明不足を洗い出し、改稿 |
| EPUB化 | pandocでMarkdownからEPUBを生成し、epubcheckでエラー・警告ゼロを維持しながら調整 |
| PDF化 | weasyprintでMarkdownから直接、印刷品質のPDFも作成 |
| 出版準備 | 書誌情報・価格戦略・キーワードなどKDP登録用の情報を整理 |
制作の過程では、AIの想定に誤りが見つかって修正した箇所もありました。例えばAIは往復座標変換の説明で「TOKYO→JGD2000→TOKYOと往復すると数cm残る」と書いていた箇所は、(バカにするんじゃね〜。そんな事は当然対応済みだ!!)実際にはGeoConverterProの変換エンジンGeoCoreJPが反復計算(Newton-Raphson法に近い方式)で逆変換を解いているため、往復してもmm以下で元の値に戻ることが確認され、本文を訂正しています(詳しくは「GeoCoreJPの高精度座標変換を支える設計思想」を参照してください)。「本を書く」という工程そのものが、アプリの説明や実装の見直しにもつながった形です(AIさんがね)。
完成した本の紹介

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | 日本の測地系がわかる本 |
| サブタイトル | 地図の座標はなぜズレるのか。TOKYOからJGD2024まで |
| 著者 | Y4U |
| 言語 | 日本語 |
章立て(序章+全9章+終章+付録の構成)
- 序章 地図の座標はなぜズレるのか
- 第1章 地球の形と「ものさし」— 測地系の基本
- 第2章 TOKYO — 明治生まれの日本測地系
- 第3章 JGD2000 — 世界測地系への大引越し
- 第4章 東日本大震災とJGD2011
- 第5章 高さの話 — 楕円体高・標高・ジオイド
- 第6章 ジオイド2011から2024へ — 標高が変わった日
- 第7章 動く日本列島 — プレート運動と元期・今期
- 第8章 JGD2024 — 最新測地系のしくみ
- 第9章 現場の落とし穴 — 座標変換の実務
- 終章 手を動かして学ぶ — アプリとWebツール
- 付録
本文で使う数式は「標高=楕円体高-ジオイド高」という引き算1本だけに絞り、各章末には GeoPrism JP/GeoConverterPro で実際に「見て・変換して」確かめる手順を用意しています。想定する読者は、測量士・測量士補、土地家屋調査士、建築・土木のICT施工担当、そして測地系の用語に興味のある方です。
品質管理の面では、EPUBはepubcheckでエラー0・警告0を維持しながら、画像の全JPEG化などでファイルサイズを大きく圧縮しています。PDF版も別途、印刷向けのレイアウトで用意しました。
価格は、発売直後の1週間を実務者が即決しやすい特別価格、2週目以降を70%ロイヤリティ帯の上限価格に切り替え、並行してKindle Unlimitedの読み放題にも対応する、という段階的な戦略で計画しています。
現在はKindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)への登録・出版準備の最終段階です。発売や価格の詳細は、続報でお伝えします。
連載予告 — この後お届けする21本
この記事を入口に、今後は制作の各工程を掘り下げた記事を順番に公開していく予定です。タイトルは執筆時に調整することがあります。
企画編
- 市場調査で見つけた空白 — JGD2024を扱う書籍がゼロだった話
- ブログ記事80本を1冊の本に再編する — 「点」を「線」にする方法
- AIサブエージェント並列執筆 — 3つの章を同時に書かせて統合するまで
- リーン初版という選択 — まず絞って早く出し、あとから完全版へ広げる判断
制作技術編
- matplotlibで書籍図版を量産する — スクリプト作図の利点と落とし穴
- pandocでMarkdownからEPUBを作る — Kindle本ビルドパイプライン
- epubcheckエラー0を維持する — EPUB品質管理の運用
- リフロー型Kindle本の図版設計 — 横長で作る・文字サイズ可変に耐える
- EPUBを大幅に減量した話 — 全画像JPEG化と配信コスト
- Kindle表紙をGeminiで作る — ベース生成+Pythonで書名合成
- weasyprintでMarkdownから紙品質PDF — EPUB経由よりきれいな理由
販売編
- Kindle本の価格を3段階で変える — 設計理由
- KDPセレクトとKindle Unlimited — ニッチ専門書こそ読み放題が効く
品質・運用編
- AIに辛口編集レビューをさせる — 複数の評価を統合した改稿プロセス
- 「中学生が3行まとめを再現できるか」— 優しさの品質基準を作る
- 技術書の数値は全部裏取りする — 断定を避けた編集判断
- 本とnote連載の二段構え
- 本を書いたらアプリが良くなった — 執筆で見つけた説明の穴
- 執筆の文体ルールを先に決める — 数式は1章1本・比喩カタログ
- 執筆の誤解を見つけた — 往復変換の説明が誤りだった件
- 進捗.mdで制作ログを残す — AI協働時代の作業記録術
各記事は公開ができ次第、このブログとGeoConverterProの記事一覧からたどれるようにする予定です。
関連記事
- GeoCoreJPの高精度座標変換を支える設計思想(GeoConverterPro)
- 旧日本測地系(Tokyo Datum)の古い図面をどう変換する?(GeoConverterPro)
- GeoPrism JP — 日本測地系のズレを「見て・学べる」iOSアプリ(GeoPrism JP)
開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。
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