
DMデータに測地系はどう書かれている? — 図郭原点からの整数座標と、変換履歴が残る3つのコード
2か所に分かれて書かれています。 平面直角座標系の系番号はファイル先頭のインデックスレコードに、日本測地系か世界測地系かは図郭レコードの「測地成果識別コード」に入ります。しかもDMには、その座標をどんな方法で変換したかまで記録する欄があります。ここを読まずに座標だけ取り出すと、変換の粗さを見落とします。
DM(数値地形図データファイル)とは
DMは、公共測量で作られた数値地形図を交換するためのテキスト形式です。仕様は作業規程の準則の付録「公共測量標準図式」に「数値地形図データファイル仕様」として定められています。都市計画基本図などの成果を自治体から受け取ると、拡張子 .dm のファイルで届くことがあります。
特徴的なのは書式の決め方です。1レコード84バイトの固定長で、各項目の桁数はFORTRANの書式(I7 なら整数7桁、A30 なら文字30桁)で指定されています。CSVのような区切り文字はなく、何バイト目から何バイト目までが何の欄かで読み分けます。
レコードは階層になっています。
インデックスレコード(I ) ← 系番号・図郭数・使用分類コード
└ 図郭レコード(M ) ← 図郭の座標・地図情報レベル・測地成果識別コード
└ レイヤ/グループヘッダ(H )
└ 要素レコード(E1〜E8) ← 図形の種類・分類コード・代表点・属性数値
└ 実データレコード ← 二次元/三次元座標・注記・属性・グリッド・TIN
座標系は「系番号」だけが書かれている
インデックスレコードの先頭近くに 座標系(平面直角座標系の系番号) の欄があります。ここに入るのは 9(第9系)のような番号だけです。
つまり、DMのファイルを開いて最初に分かるのは「これは第◯系の平面直角座標である」ということまでで、それがJGD2011の第9系なのか、旧日本測地系の第9系なのかは、この欄からは判断できません。系番号は日本測地系時代から同じ番号を使い続けているためです。同じ問題は他の形式にもあり、測地系不明の座標をズレ量から見分ける方法で扱ったとおりです。
測地系は図郭レコードの3つのコードに入る
DMが他の形式と違うのは、ここから先です。図郭レコードには測地系まわりの欄が3つあります。
| 欄 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 測地成果識別コード | 0 | 日本測地系で作成 |
| 1 | 世界測地系で作成 | |
| 2 | 日本測地系から世界測地系へ変換 | |
| 図郭識別コード | 1 | 変換にあたり図郭が切り直された |
| 0 | それ以外 | |
| 変換手法識別コード | 1 | 図郭代表点を座標変換 |
| 2 | 図郭四隅を座標変換 | |
| 3 | 全座標データを座標変換 | |
| 9 | 上記以外の座標変換 | |
| 0 | それ以外 |
注目したいのは変換手法識別コードです。値が 3 なら、図郭の中の全ての点が個別に変換されています。しかし 1 の場合は、図郭の代表点1点だけを変換し、残りはその分だけ平行移動しているということです。
日本測地系から世界測地系への変換は、全国一律の平行移動ではありません。地域によってズレの向きも量も違う、格子(グリッド)で与えられる変換です。代表点1点だけで済ませれば、図郭の端に行くほど本来の変換値との差が残ります。

「世界測地系です」と書かれていても、変換手法識別コードが1や2なら、図郭内の精度は一様ではない。 これがDMを読むときにいちばん実務的な注意点です。この欄が残っているおかげで、少なくとも後から判定できるようになっています。
また、値が 1(世界測地系で作成)だとしても、JGD2011なのかJGD2000なのか、あるいはJGD2024なのかは区別できません。DM仕様が持っているのは「日本測地系か、世界測地系か」の区別までです。年次までは、成果の仕様書や納品書類側で確認することになります。この違いが実際にどれだけ効くかはJGD2011とJGD2024を混ぜたときの落とし穴で扱っています。
座標は「図郭原点からの整数」で入っている
DMの座標レコードを開くと、I7(7桁の整数)が並んでいます。緯度経度でもメートルの小数でもありません。ここには2つの決まりがあります。
1つめ。座標値は図郭原点(左下隅)からの値です。 絶対座標を復元するには、図郭レコードに書かれた左下隅の平面直角座標を足す必要があります。図郭座標はメートル単位の整数欄と、メートル未満の端数欄に分かれて記録されます(例:-1234.56 は、図郭座標欄に -1234、端数欄に -56。端数の符号は座標の符号と揃える決まりです)。
2つめ。単位は地図情報レベルで変わります。
| 地図情報レベル | 座標値の単位 | 単位欄の記録値 |
|---|---|---|
| 500・1000 | mm | 1 |
| 2500・5000 | cm | 10 |
| 10000 | m | 999 |
同じ 1234567 という数字が、レベル500のファイルでは1234.567 m、レベル2500のファイルでは12345.67 mを意味します。単位欄を読まずに座標を取り出すと、10倍・1000倍の桁ずれが起きます。ファイル形式ごとに「数字の意味が別のところに書いてある」構造は、LASの整数座標とスケールファクタやワールドファイルの6行と同じ発想です。
欠測値の書き方も単位に連動します。 Z値が存在しない点には、m単位なら -999、cm単位なら -99900、mm単位なら -999000 が入ります。単位を取り違えると、欠測値が「標高マイナス999 m」の実データとして読み込まれてしまいます。
なお、要素レコードの属性数値(等高線や基準点の標高)は、座標値の単位とは別にmm単位と定められています。ここも取り違えやすいところです。
実際に緯度経度へ持っていくまでの手順
DMから座標を取り出して他の系へ持っていくときは、順番が決まります。
- インデックスレコードから系番号を読む
- 図郭レコードから地図情報レベル・座標値の単位・図郭原点(左下隅)座標を読む
- 図郭レコードの測地成果識別コードと変換手法識別コードを確認し、測地系と変換の粗さを把握する
- 実データの整数座標 × 単位 + 図郭原点座標 → 平面直角座標(X, Y)
- 系番号に対応する原点で緯度経度へ逆変換する
- 必要なら測地系変換(旧日本測地系なら世界測地系へ)を行う
ここで4と5を飛ばして「数字がXY座標だろう」と扱うと、図郭原点ぶんだけ丸ごとずれます。DMの座標が小さな値ばかりに見えるときは、たいてい図郭原点を足し忘れています。
平面直角座標から緯度経度への変換そのものは平面直角座標系の系と原点の早見表で扱っています。GeoConverter Proでも、系番号を指定すればこの往復ができます。
拡張DMはどう違うのか
「拡張DM」という呼び方をよく聞きます。これは道路設計などの応用測量でDMを使うために、仕様の解釈を統一し、必要な項目を整理したものです。国土技術政策総合研究所の検討資料では、現行DMからの主な変更点として仕様解釈の統一(明確化)と軽微な修正、応用測量への適用が挙げられており、とくに等高線や標高点に標高値を必ず記録することが求められています。
DM本来の仕様は「地形図を交換する」ためのものなので、図面として見えていれば標高値が空でも成り立ってしまう場面があります。設計に使うなら高さが要る、という当然の要求を仕様に組み込んだのが拡張DMの位置づけです。
まとめ
- DMの仕様は作業規程の準則の付録「公共測量標準図式」にある。84バイト固定長・FORTRAN書式
- 系番号はインデックスレコード、測地系は図郭レコードの「測地成果識別コード」(0=日本測地系/1=世界測地系/2=変換)
- 変換手法識別コードで「代表点だけ」「四隅だけ」「全座標」の別が分かる。1や2なら図郭内の精度は一様ではない
- 世界測地系と書かれていても、JGD2000/2011/2024の別はDMからは分からない
- 座標値は図郭原点(左下隅)からの整数。単位は地図情報レベル依存で mm/cm/m
- 欠測値は単位に連動して
-999/-99900/-999000。属性数値(標高)はmm単位 - 拡張DMは応用測量向けに仕様を整理したもので、等高線・標高点の標高値記録が必須
出典
- 国土地理院「公共測量標準図式 数値地形図データファイル仕様」 https://www.gsi.go.jp/common/000258741.pdf
- 数値地形図データファイル仕様(レコードの構成・付録) https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/apply/publicsale/kanri/pdf/furoku8-1.pdf
- 国土技術政策総合研究所「設計用拡張DMデータ作成仕様の運用検討」 https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0664pdf/ks066409.pdf
- 国土地理院「地図情報レベル2500 数値地形図データ作成のための標準製品仕様書(案)」 https://www.gsi.go.jp/common/000259076.pdf
記載は2026年8月時点の公開資料にもとづく整理です。作業規程の準則および図式は改正されることがあるため、実務では発注仕様書と最新の準則をご確認ください。
次に確認する
- 測地系が書かれていない座標をズレ量から見分ける方法を確認する — 系番号しか分からないDMを受け取ったときの判定手順です
- LASの整数座標がスケールファクタで実寸に戻るしくみを確認する — 「数字の意味が別欄にある」形式の代表例です
- 平面直角座標系の系と原点の早見表を確認する — 図郭原点を足したあと緯度経度へ戻すときに使います
- 旧日本測地系と世界測地系のズレが地域でどう変わるかを地図で確認する(GeoPrism JP) — 「代表点1点だけの変換」で何が残るかが目で分かります
- 書籍でまとめて学ぶ: 『日本の測地系Q&A』第13章「座標データの落とし穴」(Kindle Unlimited対応)
入門から通しで読むなら: 『日本の測地系がわかる本』 — 旧日本測地系から JGD2024 まで、座標がズレる理由と実務での扱いを1冊にまとめました(Kindle Unlimited 対応)
開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
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