
what3wordsの3語は緯度経度でどこ? — 3m四方の決まり方と、測量座標に使えない理由
what3words の3語が指しているのは点ではなく、3m四方のマス1つです。緯度経度に直すとそのマスの代表点(中心)が返るので、元の座標には戻りません。分解能が3mであること、変換仕様が公開されていないことの2つから、測量成果や図面の座標として使うことはできません。用途は「現地を人に伝える」ことに限られます。
3語が指しているのは「3m四方のマス」
what3words は地球全体を 3m × 3m の格子で覆い、そのマス1つずつに3つの単語の組を割り当てた位置参照の方式です。公式サイトの記載では、マスの総数は 57兆超、対応言語は 60言語以上(いずれも2026年9月時点)。表記は ///語.語.語 のようにスラッシュ3本を頭に付けます。
ここで測量の側から見て重要なのは、1つのマスの中ならどこでも同じ3語になるという点です。マスの隅に立っても中央に立っても同じ3語が出ます。したがって、
- 緯度経度 → 3語:無数の点が同じ1組に潰れる(多対一)
- 3語 → 緯度経度:そのマスの代表点(中心)が1つだけ返る
という非対称な関係になります。座標を3語にしてから戻すと、最大で数m動いた別の座標が返ってくるわけです。往復して元に戻る変換ではありません。
| 見かけ | 実際 |
|---|---|
| 「3語で3m精度の座標が表せる」 | 3m四方のマスが特定できる。マス内のどこかは分からない |
| 「緯度経度に変換できる」 | マスの代表点が得られる。入力した座標そのものではない |
| 「小数第5位まで返るから精度が高い」 | 桁数は表示の話で、指しているのは3mのマス |
座標の桁数と実際の分解能が別物である点は、緯度・経度「1度」は何メートル?(GeoPrism JP)の距離感と合わせて見ると分かりやすくなります。
本記事では実在の3語アドレスを例示していません。3語と座標の対応は公式のAPI/SDKを通してしか確認できず、手元で検算できない数値を記事に載せない方針のためです。
緯度経度に直したあとの流れ
3語から返ってくる緯度経度は WGS84 です。日本国内では、WGS84 と JGD2011/JGD2024 の水平位置は実務上ほぼ一致するとみなせます(厳密な関係はWGS84とJGD2024は「同じ座標」なのかにまとめました)。したがって国内で使うなら、
- 3語 → 緯度経度(WGS84):公式のAPI/SDKで取得する
- 緯度経度(WGS84 ≒ JGD2011/JGD2024) → 平面直角座標:通常の投影計算
- 系の選択は所在地で決める(平面直角座標系の「系」を間違えないために)
という3段になります。2以降は通常の座標変換なので、GeoConverter Pro を含む一般の変換ツールで扱えます。

測量座標に使えない3つの理由
1. 分解能が3m — cm級の作業とは桁が違う
境界杭や出来形管理はcm級で扱います。3mのマスは、その2桁上の粗さです。「現地に行けば分かる」用途と、「図面に記録して後から再現する」用途では、必要な分解能がまったく違います。
2. 往復で元に戻らない
上で見たとおり、3語に変換した時点でマス内の位置情報は捨てられます。座標を3語で保管すると、元の座標は永久に復元できません。記録として残すなら、3語は補助であって本体にはできません。
3. 変換の仕様が公開されていない
語彙リストとマスへの割り当て規則は公開されていないため、手元のプログラムだけでオフライン変換することはできません(2026年9月時点)。これは実務上、次の制約になります。
- 通信が届かない現場では変換できない
- 変換結果の検算が自前でできない
- 提供が止まった場合、過去に記録した3語を座標へ戻す手段が失われる
数十年単位で保存する測量成果・登記・図面にとって、この3点目は決定的です。標準地域メッシュコードや平面直角座標系のように公開された式で誰でも復元できることが、記録用の位置参照に求められる条件だからです。
他の位置参照コードとの違い
| 方式 | 1コードが指す広さ | 変換仕様 | オフライン変換 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| what3words | 3m四方 | 非公開 | 不可 | 現地を口頭で伝える・入口の指定 |
| Plus Code | 桁数で可変(約14m〜) | 公開 | 可 | 住所の無い場所の共有 |
| geohash | 桁数で可変 | 公開 | 可 | データベースの近傍検索 |
| MGRS | 桁数で可変(1m〜) | 公開 | 可 | 地図上での格子参照 |
| 標準地域メッシュ | 約1km〜約125m | 公開 | 可 | 統計の面積集計 |
| 平面直角座標系 | 点そのもの(mm表現可) | 公開 | 可 | 測量成果・図面 |
「非公開/オフライン不可」なのは what3words だけです。ここが他と決定的に違う点で、業務システムに組み込むときの判断もここで分かれます。
使うなら、緯度経度を必ず併記する
現地への呼び出し(配達先の入口、山中の集合地点、住所の無い工事ヤード)には、3語は確かに便利です。音声で伝えられ、聞き間違いにも強く設計されています。実務で使うなら次の形にしておくと後悔しません。
- 保存するのは緯度経度(または平面直角座標)。3語は表示用に添えるだけ
- 3語から座標を得たら、その時点で座標を記録に残す
- 図面・成果・登記に3語だけを書かない
- 測地系(WGS84/JGD2024など)を必ず添える。書いていない座標の見分け方は測地系が書いていない座標データの見分け方へ
GeoConverter Pro での扱い
GeoConverter Pro が担当するのは、上の流れの 2段目以降 — 緯度経度を受け取ってから測地系・平面直角座標系へそろえるところです。3語と座標の相互変換そのものは公式のAPI/SDK側の機能なので、GeoConverter Pro には含まれていません。3語で受け取った現地情報は、まず座標にしてから持ち込む、という使い分けになります。
まとめ
- 3語が指すのは点ではなく3m四方のマス。マス内のどこかは分からない
- 3語 → 緯度経度はマスの代表点が返る。往復しても元の座標には戻らない
- 変換仕様が非公開でオフライン変換ができない(2026年9月時点)
- 分解能・可逆性・仕様公開の3点から、測量成果や図面の座標には使えない
- 現地を人に伝える用途では有効。ただし保存するのは緯度経度、3語は表示用に添える
出典
- what3words 公式サイト(3m四方・57兆超のアドレス・60言語以上) https://what3words.com/about
- 国土地理院「測地成果2011・測地成果2024」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
- 国土地理院「平面直角座標系」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jpc.html
次に確認する
- Plus Code(プラスコード)は緯度経度でどこ? — 同じ「人が読み上げる位置参照」を、仕様が公開されている側から比べられます
- geohash(ジオハッシュ)は緯度経度でどこ? — マスに丸める方式で近傍検索をするときの境界の落とし穴が分かります
- 測地系が書いていない座標データの見分け方 — 受け取った緯度経度がどの測地系かを、ズレ量から判定する手順です
- 緯度・経度「1度」は何メートル?(GeoPrism JP) — 「3m」がどれくらいの桁に当たるかを図で確かめられます
- 書籍でまとめて学ぶ: 『日本の測地系Q&A』第13章「座標データの落とし穴」(Kindle Unlimited対応)
開発者より: アプリ・Kindle本・公開プロジェクトの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。
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