e-Statの境界データの座標系はどれ? — 選べるのは世界測地系だけ、平面直角座標系版でも属性の座標はJGD2000のまま

,

e-Statの境界データの座標系はどれ? — 選べるのは世界測地系だけ、平面直角座標系版でも属性の座標はJGD2000のまま

e-Statの境界データの座標系はどれ? — 選べるのは世界測地系だけ、平面直角座標系版でも属性の座標はJGD2000のまま

世界測地系だけです。

町丁・字別の人口を地図に塗りたくて、e-Statの「境界データダウンロード」を開いた。形式の選択肢が5つ並んでいて、どれを選べばいいのか迷う。測地系はどこで選ぶのでしょうか。

答えは測地系は選べないです。2026年9月時点で並んでいるのは世界測地系(JGD2000/JGD2011)のみ。だから迷うのは形式だけ——のはずが、平面直角座標系を選んだ人がいちばん引っかかる罠がここにあります。


選択肢は5つ、測地系の分岐はない

境界データダウンロード画面の「データ形式一覧」に並ぶのは次の5つです(画面表記のまま)。

  • 世界測地系緯度経度・Shapefile
  • 世界測地系緯度経度・KML
  • 世界測地系緯度経度・GML
  • 世界測地系平面直角座標系・Shapefile
  • 世界測地系平面直角座標系・GML

平面直角座標系にはKMLがありません(KMLの規格が経緯度前提のため)。緯度経度は3形式、平面直角は2形式です。

測地系の枝は、形式ではなく調査年の側に付いています。国勢調査の小地域(町丁・字等)境界データは、令和2年(2020年)と平成27年(2015年)に JGD2000版とJGD2011版の両方があり、平成22年・17年・12年はJGD2000版のみ。2026年9月時点で最新は令和2年で、令和7年国勢調査の境界データはまだ公開されていません。

日本測地系の選択肢は、現在の画面には一つもありません。ただし——

その地図データに対応する「e-Stat」の境界データは、2000(平成 12)年国勢調査からのものが、日本測地系と世界測地系それぞれの測地系に関して、緯度経度と平面直角座標系の座標系での、Shape 形式と GML 形式で提供されている。

これは矢野桂司「日本の統計GIS」(立命館文学650号)の記述で、かつては日本測地系版も配られていたことを示しています。いつ提供が終わったかを述べたe-Stat公式のアナウンスは見つかりませんでした。手元の古いフォルダから発掘した境界データを使うときは、ファイル名からは測地系が判別できないことを前提に扱ってください。日本測地系は測量法上、平成24年2月をもって失効しています。


.prjは付いている。ただしEPSGコードは書かれていない

e-Statのヘルプにも定義書にも、.prjファイルへの言及が一切ありません。そこで実際にZIPを落として中身を確認しました。

Shapefile版のZIPに入っているのは .shp .shx .dbf .prj の4ファイル。緯度経度・平面直角、JGD2000・JGD2011の組合せを確認した範囲では、すべてに .prj が同梱されていました。中身は次のとおりです(緯度経度・JGD2000版)。

GEOGCS["GCS_JGD_2000",DATUM["D_JGD_2000",SPHEROID["GRS_1980",6378137.0,298.257222101]],PRIMEM["Greenwich",0.0],UNIT["Degree",0.0174532925199433]]

JGD2011版は JGD_2000JGD_2011 に置き換わるだけ。平面直角座標系版(例:5系)はこうです。

PROJCS["JGD_2000_Japan_Zone_5",GEOGCS["GCS_JGD_2000",...],PROJECTION["Transverse_Mercator"],PARAMETER["False_Easting",0.0],PARAMETER["False_Northing",0.0],PARAMETER["Central_Meridian",134.3333333333333],PARAMETER["Scale_Factor",0.9999],PARAMETER["Latitude_Of_Origin",36.0],UNIT["Meter",1.0]]

注目すべきは、AUTHORITY["EPSG",...] 句がどこにも無いことです。ESRI形式のWKT1で、投影パラメータは完全に書かれているものの、EPSGコードは埋まっていません。GISソフト側が名前と投影パラメータを辞書照合してEPSGに当てはめる形になるため、EPSGコードを必須とするツールでは「CRS不明」として扱われることがあります。「e-Statの.prjにはEPSG:4612と書いてある」は誤りです。

なお .cpg は同梱されておらず、.dbf の文字コードはShift_JISでした。定義書の脚注にも「文字コード:シフトJIS。左詰め。」とあります。DBFヘッダの言語ドライバIDを見る実装(GDAL/QGISなど)なら問題ありませんが、UTF-8決め打ちで読むツールでは属性名が化けます。


系番号は選べない——都道府県ごとに固定

平面直角座標系版を落とすとき、「何系にしますか」とは聞かれません。データ側で決まっています。

平面直角座標系の本州・北海道側の系番号区域図。北海道が11〜13系、関東が9系に分かれている

定義書には次の注記があります。

※ 平面直角座標で複数の系にまたがる次の4都道県は、それぞれ、北海道は12系、東京都は9系、鹿児島県は2系、沖縄県は15系としている。

上の区域図のとおり、北海道は本来11・12・13系の3つにまたがりますが、境界データでは全域が12系に押し込まれています。東京都も本来は9系(本土)と14・18・19系(島嶼)に分かれるところを9系に統一。鹿児島県は2系、沖縄県は15系。

系の範囲外まで同じ系で投影すると、中央子午線から離れるほど距離のゆがみが大きくなります。北海道の東端・西端や、東京都の島嶼部を平面直角座標系版のまま面積計算に使うと、ここが効いてきます。用途が計測なら、経緯度版を落として自分で適切な系へ投影し直すほうが素直です。


いちばんの罠——平面直角座標系版でも、属性の座標はJGD2000の経緯度

境界データの属性テーブルには X_CODE Y_CODE という座標欄があります。平面直角座標系版を落とせば、ここにもX・Y(メートル)が入っていそうなものですが——入っていません。

定義書にはこう書かれています。

※ 属性情報については、JGD2000の値。

つまり、JGD2011版を落としても、平面直角座標系版を落としても、属性の座標値はJGD2000の10進経緯度のままです。確認した範囲では、4つのバリアントのDBFはバイト単位で同一でした。

図形(.shp)の座標と属性(.dbf)の座標が別物になっている、ということです。属性欄の値をそのまま「この地域の代表点」として使い、図形と重ねてズレを疑う——という事故の起点はここです。図形側を信じてください。


品質仕様は「ない」——国土数値情報とは対照的

国土数値情報には製品仕様書があり、位置正確度の適合品質水準(水平位置の標準偏差25m)まで書かれています。e-Statの境界データにはそれがありません。ヘルプ全文を検索しても「位置精度」「位置正確度」「縮尺」の記載は出てきません。

代わりに置かれているのが、この一文です。

1.品質等 本システムで利用できる町丁・字等境界データについては、統計関連業務等のために作成されたもので、一般的な地域境界や行政区域とは必ずしも一致していません。このため、同境界データを利用される方は、自らの責任で利用目的に適合しているかを判断してください。

さらに「境界データについての注意事項」に、実務で効く3点が書かれています。

注意事項 逐語
実際の町丁・字と一致しない 「調査を実施する際に設定した調査区の境界を基に作成しているため、住居表示等で用いられている実際の町丁・字の境界と一致しない場合があります」
面積が公式面積と合わない 「基本単位区又は町丁・字等の面積は、それぞれの境界データの図郭により算出したものであり、市区町村内のすべての総計は、国土地理院等の公式な面積と一致しません」
都道府県境が接合されていない 「都道府県の境界線は、接合処理を行っていないため、都道府県をまたがって市区町村を接合した場合には、都道府県の境界線にずれが生じる場合があります」

3つめは、複数県をマージして首都圏や近畿圏の図を作るときに必ず出会います。県境に細い隙間や重なりが出るのは、座標系の設定ミスではなく仕様です。 座標変換で直そうとしても直りません。

境界そのものも5年ごとに作り直されます。「国勢調査の実施毎(5年毎)にデータを作成しています」(G空間情報センター、作成者:総務省統計局)。年次をまたいで面積や人口密度を比較するときは、境界が同一である保証がないことを前提にしてください。


測地系のズレは、メッシュ統計のほうに効く

境界データそのものより測地系の影響が大きいのは、地域メッシュ統計です。メッシュは緯度経度で機械的に切るため、測地系が変わると同じメッシュコードが指す区画が動きます。

総務省統計局「統計Today No.59」は、日本測地系から世界測地系への移行で東京付近では北西方向へ約450mずれると説明しています(同ページはShift_JIS配信のため、逐語引用は原文でのご確認をおすすめします)。国勢調査のメッシュ統計は平成7・12・17年は両測地系で公表され、平成22年調査から世界測地系のみになりました。

JGD2000とJGD2011のあいだにも同定結果の違いがあります。

令和2年国勢調査及び令和3年経済センサス-活動調査に関して、世界測地系(JGD2000)と世界測地系(JGD2011)のそれぞれで同定を行い、地域メッシュ統計を作成したのは、下の図のように結果に違いが生じるものがあるためです。

こちらはズレ量の数値が示されておらず、「メッシュの割り当てが変わる例がある」以上のことは公式資料からは言えません。JGD2000版とJGD2011版のどちらを使うかは、比較したい他のデータに合わせるのが安全です。


統計データと結合するキー

境界データと統計表を結合するキーは KEY_CODE です。

  • 統計データ側:「都道府県番号+市区町村番号+町丁字コード」
  • 境界データ側:「PREF+KEYCODE2」(11桁の文字列=2+3+6)

数値型ではなく文字列なので、表計算ソフトで開いて先頭の0が落ちると結合できなくなります。

もう一点。町丁・字ごとの数値を足し上げても市区町村計に一致しないことがあります。

集計上、町丁・大字が特定できない場合、町丁・大字名は「その他」(コードは「999999999999」)として表章しています。一方、境界データでは、「その他」の地域が特定できない場合「その他」を作成していません。

秘匿処理(HTKSYORI HTKSAKI GASSAN)で他地域へ合算されている行もあります。合計が合わないときは、座標や結合を疑う前にこの2つを見てください。


使うときの出典表示

e-Statのコンテンツは商用利用を含めて自由に利用できますが、条件が2つあります。

ア コンテンツを利用する際は出典を記載してください。
イ コンテンツを編集・加工等して利用する場合は、上記出典とは別に、編集・加工等を行ったことを記載してください。

座標変換したり、県をマージしたり、簡略化したりすれば「加工」です。 出典表示に加えて、加工した旨の記載が要ります。利用ルールは政府標準利用規約(第2.0版)準拠でCC BYと互換とされています。

出典

  • 総務省統計局・独立行政法人統計センター「政府統計の総合窓口(e-Stat)」統計GIS 境界データダウンロード https://www.e-stat.go.jp/gis
  • e-Stat「ダウンロードデータについて」(境界データの品質等・注意事項・提供形式) https://www.e-stat.go.jp/help/data-definition-information/download
  • e-Stat「令和2年国勢調査 小地域(町丁・字等別)境界データ 定義書」 https://www.e-stat.go.jp/help/data-definition-information/downloaddata/A002005212020.pdf
  • e-Stat「政府統計の総合窓口(e-Stat)利用規約」 https://www.e-stat.go.jp/terms-of-use
  • e-Stat「地域メッシュ統計におけるJGD2000とJGD2011について」 https://www.e-stat.go.jp/help/data-definition-information/downloaddata/help_mesh_2011.pdf
  • 総務省統計局「統計Today No.59 世界測地系と地域メッシュ統計」 https://www.stat.go.jp/info/today/059.html
  • 総務省統計局「地域メッシュ統計の概要」 https://www.stat.go.jp/data/mesh/pdf/gaiyo1.pdf
  • G空間情報センター「令和2年国勢調査 町丁・字等別境界データ」 https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/soumu-r2-town
  • 矢野桂司「日本の統計GIS」立命館文学 第650号 https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/rb/650/650PDF/yano.pdf

本記事の記述は2026年9月時点で公表されている資料と、同時点でダウンロードしたファイルの実測に基づきます。.prj の内容・.dbf の文字コード・属性値の同一性は、e-Statの公式文書に記載がないため実ファイルを確認した結果であり、仕様として保証されたものではありません。確認したのは一部の都道府県・一部の年次に限られます。日本測地系版の提供が終了した時期については、公式のアナウンスを確認できていません。


GeoConverter Proの変換画面。WGS84・東京測地系・JGD2024の座標カードが並んでいる

図形と属性で座標の基準が食い違っているとき、どちらがどの測地系の値なのかは、実際に変換して並べてみるのが早いです。

GeoConverter Pro(座標変換アプリ)
https://apps.apple.com/jp/app/geoconverter-pro/id6761740960


次に確認する


入門から通しで読むなら: 『日本の測地系がわかる本』 — 旧日本測地系から JGD2024 まで、座標がズレる理由と実務での扱いを1冊にまとめました(Kindle Unlimited 対応)


開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

トップへ戻る