
市場調査で見つけた空白 — JGD2024を扱う書籍がゼロだった話(連載②)
前回の「アプリ開発者がKindle本を出すまで」(連載①)では、Kindle電子書籍「日本の測地系がわかる本」の制作全体像を紹介しました。今回はその出発点、「なぜこの本を作る価値があると判断したか」という市場調査の話です。
調査の観点 — 何をもって「類書」とするか
執筆前に確認したかったのは、次の3つの領域に「JGD2024を中心に据えた、体系立った入門書」がすでに存在するかどうかでした。
- 商業出版(大手出版社の測量・GIS専門書)
- KDPなどの個人出版(Kindleストアの電子書籍)
- 無料のWeb記事(企業ブログ・国土地理院の公式資料など)
「測地系」や「座標変換」を扱う情報自体はもちろん大量にあります。問題は、それらが体系立った1冊として、TOKYOからJGD2024までの流れを通しで説明しているかという点です。
商業書籍の調査結果
検索で最初に見つかるのは、飛田幹男氏による『世界測地系と座標変換』(山海堂、2002年)です。旧日本測地系から世界測地系への移行を実務者向けに丁寧に解説した良書として、今も参照されています。ただし刊行は2002年で、当然ながら2011年の東日本大震災後のJGD2011、2025年の標高改定・JGD2024・ジオイド2024には触れていません。

国土地理院の公式資料や測量関連メディアの個別記事でJGD2024の情報を追うことはできますが、それらを1冊にまとめた最新版の入門書は見当たりませんでした。
KDP・Webの調査
Kindleストアや一般的なWeb検索でも、「JGD2024」「測地系 入門」といったキーワードで探しましたが、JGD2024を主題として体系的に扱う個人出版本は見つかりませんでした。ESRIジャパンや測量機器メーカー、建設ICT系メディアがそれぞれ良質な解説記事を出してはいるものの、情報は「点」として散らばっている状態でした。
「点はあるが線がない」という結論
- 国土地理院の公式資料:正確だが、初学者が最初の1本として通読するには専門的すぎる
- 各社のブログ記事:分かりやすいが、単発の話題で終わり全体像に繋がらない
- 商業書籍:良書はあるが2002年刊行で、JGD2024以降を扱っていない
3領域とも「点」としての情報は豊富にある一方、初心者が最初のページから最後まで読めば全体の物語(TOKYO→JGD2000→JGD2011→JGD2024)がつながる、という「線」でまとめた入門書は、調べた範囲では見当たりませんでした。
空白=商品価値という判断
標高成果改定から1年が経とうとしているのに、まだJGD2024を軸にした体系的な入門書は見当たらない——この「空白」に気づいた時点で、執筆に進む判断をしました。これまでこのブログで書きためてきた80本超の記事群は、まさにその「点」の集合体です。それを時系列という「線」でつなぎ直せば、市場の空白を埋める1冊になる、という考えです。
まとめ
- 商業書籍・KDP個人出版・無料Webの3領域を調べたが、JGD2024を体系的に扱う入門書は見当たらなかった。
- 唯一の近い先行書『世界測地系と座標変換』(飛田幹男、2002年)は良書だが、JGD2024以前の内容にとどまる。
- 「点」の情報は豊富でも「線」でまとめた本がない、という空白を商品価値と判断し、執筆に踏み切った。
出典
- 世界測地系と座標変換 | 飛田幹男(山海堂) https://www.amazon.co.jp/dp/4889410147
- 日本測地系2024(JGD2024)への移行で何が変わる? | Lefixea LRTK https://www.lrtk.lefixea.com/blog-jgd2024/001
- 「日本測地系2024 (JGD2024)」への対応について | ESRIジャパン公式ブログ https://blog.esrij.com/archives/64166
- 「測地系」とは? | デジコン https://digital-construction.jp/column/3426
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