拡張DMとSXFを変換すると座標系はどうなる? — 図郭識別番号に入る系番号と、部分図の原点が(0,0)のとき起きること

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拡張DMとSXFを変換すると座標系はどうなる? — 図郭識別番号に入る系番号と、部分図の原点が(0,0)のとき起きること

拡張DMとSXFを変換すると座標系はどうなる? — 図郭識別番号に入る系番号と、部分図の原点が(0,0)のとき起きること

結論から言うと、系番号は「図郭識別番号の上位2桁」で運ばれます。 拡張DMは測地座標系だけを扱い、SXFは部分図というしくみで数値座標系と測地座標系の両方を持てます。変換の要点はこの非対称にあり、「どの部分図が測地座標系か」「図郭座標が分かるか」の2点で結果が決まります。そして実務でいちばん事故が起きるのが、部分図の原点を平面直角座標系の原点(0,0)に合わせてある図面です。


前提——2つのフォーマットが担当する工程が違う

公共事業の図面は、段階ごとに別のフォーマットで管理されてきました。

段階 使うもの
計画・調査(測量) 拡張DM(数値地形図データファイル)
設計・工事 CAD/SXF
維持管理 GIS(基盤地図情報など)/自治体では拡張DMのことも多い

このため「前段階の図面を後段階へ引き継ぐ」ための変換仕様が整備されてきました。拡張DM→SXF側は、日本建設情報総合センター(JACIC)の「拡張DM-SXF変換仕様(案)」(2006年)が標準として存在します。逆方向のSXF→拡張DMには長らく標準仕様がなく、2011年の研究で変換仕様が考案・実装され、実証実験まで行われました。以下の話は主にその研究論文(出典参照)で公開された仕様と検証結果に基づきます。

なお用語について。2008年4月の作業規程の準則改正で、「拡張DM」の名称は「公共測量標準図式数値地形図データファイル仕様」に変わっています(準則の付録に収録)。それでも現場では「拡張DM」という呼び名が通っており、変換ツールの名前にも残っています。

測地系と座標系の関係を示す変換フロー図


拡張DMのデータ構造——「図郭」が座標系を持っている

拡張DMは、次の2種類のファイルでできています。

  • 図郭ファイル(DM):図形データの実体。1つの図郭=1ファイル
  • インデックスファイル(DMI):図郭ファイルの管理情報

そして図郭とは、平面直角座標系を基に範囲を矩形に分割した区画です。ここが重要なところで、拡張DMでは座標系の情報がフォーマットの底に埋め込まれています。

  • 各図郭ファイルには図郭識別番号が付き、その上位2桁が平面直角座標系の系番号になる
  • 各要素の座標は、その図郭の左下を原点とする相対座標で入る
  • 相対座標はm単位で整数部7桁、必要に応じて端数をmm単位3桁で持てる(最大 9,999,999)

つまり「この図面はどの系か」を別欄で宣言するのではなく、図郭の識別番号がそのまま系の宣言になっている構造です。SIMAやDXFのように「座標系を書く欄があるかどうか」で悩む形式とは、そもそも設計思想が違います。

平面直角座標系1〜19系の全国区域図


SXF側の座標系——部分図が2種類ある

一方のSXFは、部分図という複合図形のしくみで座標系を持ちます。部分図には数値座標系のものと測地座標系のものがあり、用紙の上に部分図を配置するという入れ子構造で図面が表現されます。

ここに非対称があります。

数値座標系 測地座標系
SXF 扱える 扱える
拡張DM 扱えない 扱える

したがってSXF→拡張DMの変換では、測地座標系の部分図ごとに図郭ファイルを1つ生成するのが基本になります。測地座標系の部分図以外に用紙上へ直接置かれた要素があれば、それらをまとめてもう1つ図郭ファイルを作る——という設計です。こうしないと、拾いきれない要素が出てしまいます。


座標の「単位」は地図情報レベルで決まる

拡張DMの座標値は整数で入るため、1が何メートルを表すのかを決めないと復元できません。変換仕様では次の順で決めます。

  1. SXF側に「拡張DM-SXF変換仕様(案)」に沿った地図情報レベルの属性が付いていれば、それを使う
  2. 付いていなければ、部分図の縮尺から対応表で単位を決める
  3. 対応表にない縮尺なら、最も近い値へ近似する

属性が残っているかどうかで、精度の根拠がまったく違ってきます。 拡張DM→SXFの変換を通った図面(研究では「応用SXFデータ」と呼び分けています)は、分類コードや地図情報レベルなどのレコード情報が属性ファイル(SAF)に保持されているので、元の拡張DMをかなり忠実に戻せます。設計・工事の現場でゼロから描かれた図面(同じく「基本SXFデータ」)には、その属性がありません。SXF Ver.2.0で流通している場合は、属性付加機構そのものが使えないため、必然的に後者になります。


いちばんの落とし穴——部分図の原点が(0,0)のとき

実証実験で実際に起きた問題です。

変換システムは「図郭座標値の属性が無ければ、部分図の座標原点(0,0)を図郭の左下座標とみなす」という設計になっていました。ところが検証に使った道路工事の完成図は「道路工事完成図等作成要領」に準拠していて、部分図の原点(0,0)を、その地域の平面直角座標系の原点(0,0)に一致させてある図面でした。

結果、図郭の左下が座標系原点に置かれてしまい、図郭座標値が正しく設定されなかった。幾何形状も分類コードも正しく変換されているのに、図郭だけが壊れる——という形の失敗です。

対処として、基本SXFデータの場合は「部分図内の要素をすべて囲む最小の矩形の各頂点を図郭座標値にする」という仕様に修正されました。

実務側の教訓はこうです。

  • 図面の原点が「用紙の左下」なのか「座標系の原点」なのかは、運用ごとに違う
  • 変換ツールがどちらを前提にしているかは、たいてい画面に出てこない
  • だから変換後に、既知の点で座標値を1点だけでも突き合わせる

この確認をしないと、形は完璧なのに位置だけが数十km飛んでいる図面ができあがります。


桁の話——SXFのほうが精度が高い

SXFは拡張DMより高い精度で座標値を持てます。整数部で比べるとSXFが9桁、拡張DMが7桁(最大9,999,999)。実数から整数への変換では小数部を四捨五入することになるため、理屈のうえでは劣化しうる構造です。

ただし、拡張DMの座標が図郭左下を原点とする相対座標であることを思い出してください。図郭割りに則ってさえいれば、7桁で足りるので整数部の劣化は起きません。逆に言えば、図郭割りを外れた使い方をすると桁が溢れます。

小数部の丸めについては、維持管理で使う拡張DMが地図情報レベル2,500以上で作られるのに対し、設計・工事図面は1/500〜1/1,000で描かれるため、mm単位以下を丸めても運用上の問題は生じない——という整理になっています。


高さは落ちることがある

実証実験でもう1つ分かったのが、高さ情報が運べなかったことです。検証に使った図面には距離標の高さが入っていましたが、それは「道路基盤地図情報交換属性セット(案)」に沿った属性情報(SAFファイル)に収録されていました。変換仕様が想定するデータ構造と違うため、拡張DM側に格納できなかったのです。

SXFの属性セットは道路・河川といった分野ごとに策定されるものなので、分野特有の属性は、汎用の変換仕様の外側にあるという構造的な問題です。標高や高さを引き継ぎたい場合は、どの属性セットに入っているかを先に確認してください。


実務チェックリスト

拡張DMとSXFのあいだで図面を受け渡すとき、最低限これだけは確認します。

  1. 系番号:拡張DM側の図郭識別番号の上位2桁は、想定している系と一致しているか
  2. 部分図の種別:SXF側の部分図は測地座標系か、数値座標系か
  3. 部分図の原点:(0,0)が用紙左下か、座標系原点か
  4. 地図情報レベルの属性:残っているか(無ければ縮尺から推定されている)
  5. 既知点での照合:変換後の座標を、既知の1点で突き合わせたか
  6. 高さ:分野別の属性セットに入っていないか

このうち3と5は、ツールの画面を見ているだけでは分かりません。変換前後で同じ点を1つ選んで座標を並べるのが、いちばん速い検算です。GeoConverter Pro でも、手元の座標値をその場で他系・他測地系へ変換して照合できます。

https://apps.apple.com/jp/app/geoconverter-pro/id6761740960


本記事の記述は、下記出典に基づく2026年8月時点の整理です。変換仕様・要領は改定されるため、実務では発注者が適用する版を確認してください。

出典

  • 田中成典・今井龍一・樫山武浩・渡辺完弥「SXFデータから拡張DMデータへの変換技術の研究開発」知能と情報 Vol.23, No.4, pp.555-571 (2011) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoft/23/4/23_4_555/_article/-char/ja/
  • 同(PDF・国土技術政策総合研究所) https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/achievements/papers/pdf/H23_fajii02.pdf
  • 日本建設情報総合センター「拡張DM-SXF変換仕様(案)」 https://www.jacic.or.jp/hyojun/dm-cad.html
  • 国土地理院「作業規程の準則について」 https://www.gsi.go.jp/gijyutukanri/gijyutukanri41018.html

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