衛星画像の座標系はどれ? — Sentinel-2のUTMゾーンと、日本が51〜56帯にまたがる理由

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衛星画像の座標系はどれ? — Sentinel-2のUTMゾーンと、日本が51〜56帯にまたがる理由

衛星画像の座標系はどれ? — Sentinel-2のUTMゾーンと、日本が51〜56帯にまたがる理由

Sentinel-2の標準プロダクトは、WGS84のUTM座標で配布されます。 緯度経度でも平面直角座標系でもありません。タイルは100km×100kmの区画に切られ、ファイル名やフォルダ名には T54SUE のような記号が付きます。この先頭2桁がUTMゾーン番号で、日本は51帯から56帯にまたがります。つまり、北海道と沖縄の画像は別々の座標系で届きます。


まず、UTMゾーンとは何か

UTM(Universal Transverse Mercator:ユニバーサル横メルカトル図法)は、地球を経度6度ずつ60本の帯に分け、帯ごとに別の投影を当てる方式です。ゾーン番号 n の範囲は次の式で決まります。

ゾーン n の経度範囲 = 6n − 186 度 〜 6n − 180 度
ある経度 λ のゾーン番号 = floor((λ + 180) / 6) + 1

帯の中央に中央子午線を置き、そこでの縮尺係数を 0.9996 にして、帯の端との歪みを相殺します。1つの帯の中では、距離も面積もメートル単位でそのまま扱えます。

日本の東西の広がりを、この式に当てはめてみます。

地点 おおよその経度 UTMゾーン
与那国島(日本最西端) 約122.9°E 51
那覇・福岡 約127.7°E / 約130.4°E 52
大阪 約135.5°E 53
東京・札幌 約139.7°E / 約141.4°E 54
根室(納沙布岬) 約145.8°E 55
南鳥島(日本最東端) 約154.0°E 56

本州・四国・九州だけでも52・53・54の3帯にまたがります。国土全体では51〜56の6帯です。


Sentinel-2のタイル名 T54SUE の読み方

Sentinel-2のプロダクトは、MGRS(Military Grid Reference System)のタイル区画で配布されます。タイル名は次の構成です。

部分 意味
先頭2桁 54 UTMゾーン番号(経度6度の帯)
次の1文字 S 緯度帯(南北8度ごと。CからXまで、IとOは欠番)
末尾2文字 UE 帯の中の100km四方の区画

緯度帯の文字は、赤道より北が N(0〜8度)、P(8〜16度)、Q(16〜24度)、R(24〜32度)、S(32〜40度)、T(40〜48度)と続きます。日本だと、沖ノ鳥島がQ、沖縄がR、本州の大部分がS、北海道と東北北部がTです。

東京付近は T54S から始まるタイル群に入ります。

タイルの実寸は公称100km×100kmですが、実際には約110km四方で切られており、隣のタイルと約5km重なります。同じ地点が複数のタイルに入ることがあるのはこのためで、時系列で画像を重ねるときの取り違えの原因になります。


EPSGコードは「ゾーンごとに別」

UTMのEPSGコードは、WGS84(北半球)で 32600 + ゾーン番号です。

ゾーン EPSG 主な対象
51N EPSG:32651 与那国島など先島諸島の西端
52N EPSG:32652 沖縄本島・九州西部
53N EPSG:32653 中国・四国・近畿
54N EPSG:32654 中部・関東・北海道西部
55N EPSG:32655 北海道東部
56N EPSG:32656 南鳥島

ここが実務でいちばん引っかかる点です。九州と関東のSentinel-2タイルをそのまま重ねると、座標系が違うので合いません。 同じ「メートル単位のXY」に見えても、中央子午線が6度ずれた別の投影だからです。全国をまたぐ解析では、どれか1つのゾーン、あるいは緯度経度(EPSG:4326)などに統一してから処理する必要があります。

なお、日本測地系(JGD2000・JGD2011)にもUTMゾーンのEPSGコードは用意されていますが、Sentinel-2などの衛星画像はWGS84で配布されるのが基本です。国内の測量成果と重ねる場合は、測地系の違いも含めて確認してください。日本国内ではWGS84とJGD2011の水平位置の差は実用上ごく小さいものの、「小さい」と「ゼロ」は別です。


UTMと平面直角座標系の違い

「メートル単位の平面座標」という点で、UTMと日本の平面直角座標系は似ています。目的が違います。

UTM 平面直角座標系(日本)
帯の幅 経度6度(全世界60帯) 狭い(全国を19系に分割)
中央子午線の縮尺係数 0.9996 0.9999
歪みの大きさ 帯が広いぶん大きい 小さく抑えられている
主な用途 広域・全世界共通。衛星画像・国際データ 公共測量・登記・土木設計
座標の呼び方 東がX(easting)・北がY(northing) 北がX・東がY(逆)

最後の行が事故の元です。UTM(というより一般的なGIS)では東向きがX、北向きがYですが、日本の平面直角座標系ではXが北、Yが東です。衛星画像のXYをそのまま測量成果のXYに入れると、南北と東西が入れ替わります。

平面直角座標系 全19系の区分図

日本の19系は、それぞれ担当区域が県単位で細かく決められています。UTMの「6度ごとに機械的に切る」方式と比べると、歪みを抑えるために国土をどれだけ細かく刻んでいるかが分かります。


実務での確認手順

  1. GeoTIFFのメタデータでEPSGを確認する。 Sentinel-2のJP2/GeoTIFFにはCRSが埋め込まれています。ファイル名の T54SUE とメタデータのEPSG(この場合32654)が一致しているかを見ます
  2. 複数タイルをまたぐなら、先に座標系を統一する。 ゾーンが混在したまま重ねない
  3. 国内の測量成果と合わせるときは、測地系と軸順の両方を確認する。 WGS84かJGD2011か、XYが北東かを両方そろえて初めて重なります
  4. 面積・距離を出すなら、どの投影で計算しているかを意識する。 UTMは0.9996、平面直角座標系は0.9999の縮尺係数がかかっており、そのまま実距離ではありません

GeoConverter Pro は緯度経度と平面直角座標系19系(TOKYO / JGD2011 / JGD2024系列)の相互変換に対応しているので、衛星画像側で読み取った緯度経度を、国内の成果が載っている系へ載せ替える工程で使えます。


まとめ

  • Sentinel-2の標準プロダクトは WGS84のUTM座標。タイル名 T54SUE の先頭2桁がゾーン番号
  • タイルは公称100km四方(実際は約110km四方で隣と約5km重なる)、MGRSの区画で切られる
  • 日本は UTM 51〜56帯にまたがる。EPSGは 32600 + ゾーン番号(32651〜32656)
  • ゾーンが違う画像はそのまま重ならない。全国解析では座標系を先に統一する
  • 平面直角座標系とは、帯の幅・縮尺係数(0.9996 対 0.9999)・軸の向き(東X北Y 対 北X東Y)が違う

出典

  • Sentinel-2 — Copernicus Data Space Ecosystem Documentation: https://documentation.dataspace.copernicus.eu/Data/SentinelMissions/Sentinel2.html
  • SENTINEL2 — Sentinel-2 Products(GDALドライバ仕様): https://gdal.org/drivers/raster/sentinel2.html
  • HLS Tiling System(MGRSタイル区画の仕様)— NASA: https://hls.gsfc.nasa.gov/products-description/tiling-system
  • Harmonized Landsat-8 Sentinel-2 (HLS) Product User’s Guide — NASA: https://hls.gsfc.nasa.gov/wp-content/uploads/2017/02/HLS.v1.2.UserGuide.pdf
  • Wasting petabytes: A survey of the Sentinel-2 UTM tiling grid and its spatial overhead — ISPRS Journal(タイルの重なりと冗長性): https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924271623001971

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