Webメルカトル(EPSG:3857)と平面直角座標系を取り違えない — 地図アプリと測量座標のあいだ

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Webメルカトルと平面直角座標系の違い

Webメルカトル(EPSG:3857)と平面直角座標系を取り違えない — 地図アプリと測量座標のあいだ

地図アプリやWeb地図でピンの位置を扱っていると、「数字としては座標なのに、測量で使う座標とどうつながるのか分からない」という場面が出てきます。背景にあるのが Webメルカトル(EPSG:3857)平面直角座標系、そして 緯度経度(EPSG:4326) という、性格の違う3つの座標の存在です。GeoConverterPro(GCVP)の座標変換の目線で、取り違えやすいポイントを整理します。


まず3つの座標を区別する

座標系 代表的なEPSG 単位 主な用途 性格
緯度経度(地理座標) EPSG:4326(WGS84) GPS・住所・データ交換 地球を角度で表す
Webメルカトル EPSG:3857 メートル Web地図・タイル表示 表示用の投影。距離・面積はゆがむ
平面直角座標系 系ごとに割当 メートル 測量・公共事業・図面 狭い範囲で高精度な平面

緯度経度は地球上の位置を角度で表すもので、GPS の出力もこれです。Webメルカトルは、その緯度経度を「正方形タイルに切って地図を高速表示する」ために投影したもので、Google マップや OpenStreetMap、Leaflet などの背景地図で広く使われています。平面直角座標系は、日本国内を複数の系に分け、それぞれの狭い範囲でメートル単位の高精度を保つよう設計された、測量・図面のための座標です。


Webメルカトルを「測量座標」と思ってはいけない

Webメルカトルの座標値はメートル単位で出てくるため、平面直角座標系と混同されがちです。しかしWebメルカトルは表示を優先した投影で、高緯度ほど距離や面積が引き伸ばされます。地図を眺めるには十分でも、そのままの値で距離・面積を測ったり、図面の座標として使ったりすると誤差が大きくなります。

  • Webメルカトルの値で長さ・面積を計算しない:ゆがみを含むため、測量用途には不向き。
  • 背景地図がWebメルカトルでも、成果は平面直角座標系で:表示と成果の座標系を分けて考える。
  • データ交換は緯度経度(EPSG:4326)で受けて、必要な座標系へ変換する:受け渡しの基準をはっきりさせる。

座標を「どの座標系で持っているか」を取り違えると、変換のスタート地点を間違えます。まずは手元の値が緯度経度なのか、Webメルカトルなのか、平面直角なのかを確認するのが先決です。

座標変換のフロー


普段見ている地図の多くはWebメルカトルで配信されている

「Webメルカトルなんて自分は使っていない」と思うかもしれませんが、実は地理院タイル(国土地理院の標準地図・淡色地図・写真など)やGoogleマップ、OpenStreetMapをはじめ、私たちが日常的に目にするWeb地図の大半はWebメルカトルで配信されています。これらは地図を {z}/{x}/{y}(ズームレベル/列/行)という正方形タイルに切り分けて配信する「XYZタイル方式」を採っており、このタイルの基準になっているのがWebメルカトル投影です。

GeoDiveExa(GDE)の背景地図設定(1net10-code)でも、次のタイル配信URLをそのまま利用しています。いずれもWebメルカトルのXYZタイルです(Googleマップも同じWebメルカトルですが、ここではGDEが背景地図として登録している配信元を挙げます)。

地図 配信URL(タイルテンプレート)
国土地理院:標準地図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/std/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:淡色地図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/pale/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:数値地図2000 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/lcm25k_2012/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:色別標高図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/relief/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:陰影起伏図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/hillshademap/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:傾斜量図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/slopemap/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:土地条件図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/lcm25k/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:白地図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/blank/{z}/{x}/{y}.png
国土地理院:写真 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg
国土地理院:火山基本図 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/vbm/{z}/{x}/{y}.png
産総研:地質図 https://gbank.gsj.jp/seamless/v2/api/1.2/tiles/{z}/{y}/{x}.png
林野庁:国有林写真 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/rinya/{z}/{x}/{y}.png
H28熊本地震 益城・西原 https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/20160414kumamoto_0530dol/{z}/{x}/{y}.png
R2/7球磨豪雨(浸水推定) https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/20200703oame_kumagawahitoyoshi_0704dansaizu/{z}/{x}/{y}.png
磁気図2020.0年値(偏角) https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/jikizu2020_chijiki_d/{z}/{x}/{y}.png
H23年東北地震(津波浸水) https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/20110311_tohoku_shinsui/{z}/{x}/{y}.png
OpenStreetMap http://tile.openstreetmap.org/{z}/{x}/{y}.png
PLATEAUオルソ画像 https://gic-plateau.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/2020/ortho/tiles/{z}/{x}/{y}.png

URLに {x} {y} {z} が並んでいたら、それはWebメルカトルのタイル番号を指していると考えてほぼ間違いありません(産総研の地質図のように {z}/{y}/{x} と並び順が異なる配信もありますが、Webメルカトルのタイルである点は同じです)。つまり、背景に表示している地図は「見せるためにWebメルカトルへ投影された画像」であり、その上に重ねる測量成果は別の座標系(平面直角座標系など)で持つ、という二重構造になっているわけです。背景地図がきれいに表示できることと、成果座標の精度は別問題だと意識しておくと安心です。


平面直角座標系は「系」を間違えない

平面直角座標系は日本を複数の系に分けて運用します。狭い範囲で高精度を保つ仕組みなので、対象地が属する系を取り違えると座標は大きくずれます。地図アプリ由来の緯度経度から平面直角座標系へ変換するときは、測地系(JGD2011/JGD2024)と系番号の両方を正しく指定することが要点になります。系の考え方は別記事で詳しく整理しています。

地図上で緯度経度から平面直角座標へ変換する画面 地図上で緯度経度から平面直角座標へ変換する画面

GeoConverterPro では、緯度経度・平面直角座標系のあいだの変換を、測地系と系番号を指定して行えます。地図アプリで拾った緯度経度を、測量や図面で使う平面直角座標へ橋渡しする、その途中の取り違えを減らすのが狙いです。なお JGD2024 の平面直角座標系の EPSG コードについては別記事で扱っています。


まとめ

Webメルカトル(EPSG:3857)・緯度経度(EPSG:4326)・平面直角座標系は、どれも「座標」ですが役割が違います。Webメルカトルは表示用でゆがみを含み、測量座標ではありません。データ交換は緯度経度で、測量・図面の成果は平面直角座標系で。手元の値がどの座標系かをまず確認し、測地系と系番号を正しく指定して変換する——この基本を押さえれば、地図アプリと測量座標のあいだの取り違えはかなり防げます。


関連記事(参考情報)


出典

  • 国土地理院「わかりやすい平面直角座標系」 https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jpc.html
  • 国土地理院「地理院タイル一覧」 https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html
  • EPSG Geodetic Parameter Dataset https://epsg.org/
  • 配信URLは GeoDiveExa(GDE)の背景地図設定(1net10-code/CommonSrc/ViewModels/SettingViewModel.cs)より引用

開発者より: アプリ・Kindle本・オープンソースの一覧は GitHub: amru195704 にまとめています。


お願い
本記事の情報は参考目的で掲載しており、正確性・完全性を保証するものではありません。誤記・不正確な情報がございましたら、コメント欄よりご指摘いただければ、確認のうえ修正いたします。


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