ガウス・クリューゲル投影の式を読む — 平面直角座標はこう計算される

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ガウス・クリューゲル投影の式を読む — 平面直角座標はこう計算される

ガウス・クリューゲル投影の式を読む — 平面直角座標はこう計算される

「座標変換式・アルゴリズム」シリーズの続きです。前々回は楕円体の定義定数からすべてを導く話、前回は子午線弧長という投影計算の心臓部を扱いました。今回はいよいよ本題、平面直角座標系そのものを作っているガウス・クリューゲル投影の式を読み解きます。


平面直角座標系は「ガウス・クリューゲル図法」でできている

国土地理院が発行する地図、そしてGeoConverterPro(GCVP)が扱う平面直角座標系(1〜19系)は、ガウス・クリューゲル図法(横メルカトル図法の一種)という投影方式に基づいています。地球を回転楕円体とみなし、円筒を地軸に対して横倒しにかぶせて投影する方式で、球体を前提とする単純なメルカトル図法よりも高精度に地表を平面へ写せるのが特徴です。

平面直角座標系の各系(第1〜19系)は、それぞれ固有の「原点(基準となる経緯度)」を持ち、その原点を通る子午線を中央子午線としてガウス・クリューゲル投影をかけたものです。系の選び方そのものは平面直角座標系ガイドで扱ったので、本記事では「その投影が内部でどう計算されているか」に絞ります。


順変換の骨格 — 子午線弧長+補正項の級数

緯度経度(φ, λ)から平面直角座標(X, Y)への順変換は、大まかに次の骨格で組み立てられています。

  1. 中央子午線上の子午線弧長(赤道からその緯度までの子午線に沿った距離)を計算する — 前回記事で扱った楕円積分の級数展開がここに使われる
  2. 中央子午線からの経度差(Δλ)に応じた補正項を、Δλの級数(Δλ・Δλ³・Δλ⁵…といった奇数次の項)として積み上げる
  3. 縮尺係数 m₀(平面直角座標系では0.9999)を最後に掛けて、X・Yそれぞれの値を得る

つまり「南北方向の骨格(子午線弧長)」と「東西方向のズレを補正する級数」を組み合わせる、という構造です。逆変換(平面直角座標→緯度経度)はこの逆算にあたり、別記事で紹介した2025年の算式改善もこの逆変換側が対象でした。

座標変換の計算フロー概要


2つの級数展開 — 1912年のクリューゲルの2つの式

ガウス・クリューゲル投影の級数展開には、実は歴史的に2つの流儀があります。クリューゲルは1912年の論文で、次の2種類の展開式を発表しました。

展開方式 特徴 適用範囲
中央子午線からの経度差で展開する式 数式は比較的シンプル 中央子午線から離れるほど精度が落ちる(適用できる経度幅に制限)
楕円体の扁平率のみに依存する係数で展開する式 係数の計算は複雑だが、より広い範囲で高精度 広域でも精度を保ちやすい

日本では長らく前者(経度差ベースの展開)が使われてきましたが、2013年度から公共測量の「作業規程の準則」・国土地理院の測量計算サイトともに後者(扁平率ベースの展開)に切り替わっています。GeoCoreJPが内部で採用している算式も、この扁平率ベースの現行方式に準拠しています。


なぜ「扁平率ベース」のほうが有利なのか

経度差ベースの展開は、中央子午線付近では計算が軽く直感的ですが、経度差Δλが大きくなるほど級数の収束が悪くなり、精度を保つために展開する項数を増やす必要が出てきます。一方、扁平率(楕円体固有の定数)だけに依存する展開方式は、係数そのものの導出はやや複雑になるものの、中央子午線から離れた領域でも同じ精度を保ちやすいという利点があります。

平面直角座標系の各系は、中央子午線から東西に離れた地域も含みます(系によっては県境や離島まで含む)。系番号のAuto判定の記事で触れたとおり、境界付近・離島の扱いには注意が必要ですが、この注意が必要になる背景にも、投影の性質上「中央子午線から離れるほど工夫が要る」という構造があります。

平面直角座標系1〜19系の適用範囲マップ


GeoCoreJPの実装方針との関係

GeoCoreJPの高精度座標変換を支える設計思想で紹介したとおり、GeoCoreJPは逆変換を「専用の近似式」ではなく「順変換の反復収束」で解く設計です。この記事で扱った順変換(緯度経度→平面直角座標)の級数展開こそが、その反復計算の中で何度も呼び出される核となる関数にあたります。順変換側の精度と収束の速さが、逆変換全体の精度をそのまま左右する、という関係です。


まとめ

  • 平面直角座標系は、地球を回転楕円体とみなして横倒しの円筒に投影するガウス・クリューゲル図法に基づく。
  • 順変換は「子午線弧長(南北方向の骨格)」+「経度差に応じた補正項の級数(東西方向の補正)」+「縮尺係数0.9999」という骨格で計算される。
  • 級数展開には「経度差ベース」と「扁平率ベース」の2流儀があり、2013年度から公共測量・国土地理院の計算サイトは扁平率ベースの式に統一されている。
  • GeoCoreJPはこの現行の扁平率ベース算式に準拠し、順変換の反復収束で逆変換を解く設計と組み合わせている。

出典

  • Gauss-Krüger 投影における経緯度座標及び平面直角座標相互間の座標換算についてのより簡明な計算方法 | 国土地理院 https://www.gsi.go.jp/common/000061216.pdf
  • ガウス・クリューゲル図法 | Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%AB%E5%9B%B3%E6%B3%95

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